日本の平和を担う約22万人の自衛隊員。その巨大組織において、指揮官として現場を動かすリーダー層が「幹部自衛官」だ。

 1987年生まれの松田小牧さんは、2007年に防衛大学校へ入校。2011年に卒業後、幹部自衛官を目指して陸上自衛隊の幹部候補生学校に進学したが、ほどなく中途退校の道を選んだ。現在はフリーの編集者・ライターとして活動するほか、出版社・月待舎の代表を務めている。

 当時、学生の約9割を男性が占めていた文字通りの「男社会」に、なぜ松田さんは飛び込んだのか。そして、道半ばでキャリアを転換した理由とは——。(全4回の1回目/つづきを読む)

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松田小牧さん 撮影=橋本篤/文藝春秋

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2021年に書籍を出版…現役自衛官から“複雑な反応”も

——松田さんは『防大女子-究極の男性組織に飛び込んだ女性たち-』(ワニブックス)を2021年に上梓されています。評判はいかがでしたか?

松田小牧さん(以下、松田) 自衛官のみならず、民間企業に勤める女性たちからも「わかる。女性にはそういう辛さがある」といった言葉をいただきました。

 ただ、正直に言えば、自衛隊内部の人からは賛否両論があったと感じています。私は幹部候補生学校を中途退校した“下っ端”です。ですから「組織としての論理が欠けている」といった指摘もありました。

 防大生時代、4年生のパレードにて(本人提供)

——そもそも、防衛大学校とはどんな組織なのでしょうか?

松田 防衛大学校は、将来の幹部自衛官を育てるための4年制の教育機関です。防大を卒業した時点で「幹部候補生」となり、陸海空それぞれの幹部候補生学校に進みます。そこで初級幹部としての知識と技能を約1年間学んでから、各部隊に配属されることになります。

——松田さんは、部隊に配属される前に辞めたんですね。

松田 はい。なので、「部隊のことを何も知らない人間に赤裸々に暴かれた」と思われた方もいたようです。とりわけ当事者である女性自衛官のほうが、モヤモヤを抱いていた方が多かったように思います。

 ある女性の幹部自衛官からは、「最初は『書かれたか』という複雑な思いを抱いた」と言われました。「『パンドラの箱を開けられた』みたいな感じはあったよ」と。

——松田さんはなぜ防衛大学校に入ろうと思ったんですか?

松田 私は大阪府の公立高校の出身で、第1志望は早稲田大学でした。でも、母子家庭だったので、金銭的な面で現実的ではなくて。