日本の平和を担う約22万人の自衛隊員。その巨大組織において、指揮官として現場を動かすリーダー層が「幹部自衛官」だ。

 1987年生まれの松田小牧さんは、2007年に防衛大学校へ入校。2011年に卒業後、幹部自衛官を目指して陸上自衛隊の幹部候補生学校に進学したが、ほどなく中途退校の道を選んだ。現在はフリーの編集者・ライターとして活動するほか、出版社・月待舎の代表を務めている。

 男社会における“圧倒的少数派”として、4年間の寮生活を送る“防大女子”たち。松田さん自身の経験と、数多くの経験者への取材から浮かび上がる、衝撃の実態を聞いた。(全4回の3回目/つづきを読む)

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松田小牧さん 撮影=橋本篤/文藝春秋

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髪型はベリーショート必須、平日は6時起床で外出は禁止

——大学の初日といえば入学式。ですが、防大では独特の儀式があるそうですね。

松田小牧さん(以下、松田) 上級生が歓迎の腕立て伏せをしてくれることが多いです。入校した1学年の期別の数だけ上級生が腕立て伏せをしてくれます。私の場合は55期生なので、55回でした。

 2021年に出版した書籍『防大女子-究極の男性組織に飛び込んだ女性たち-』の取材で、ほかの防大女子にも話を聞きましたが、この腕立て伏せを印象的に振り返る人が多かったです。「やばいところに来ちゃった」「あまりにびっくりしてしまってその夜は寝られなかった」と言う人もいました。

小銃の扱いはお手のもの(本人提供)

——ほかにも初日で印象的な出来事はありましたか?

松田 個人的に決意が必要だったのは髪型でした。女子は1学年のみベリーショートにしなければならず、耳や襟足が完全に隠れるのはアウトだったんです。

 高校時代の私はいわゆる“お姉系”で、週末ともなれば髪をコテでグルグルに巻いていたんです。なので、私にとっては「髪を切ること」が第一関門でした。

高校の卒業式にて(本人提供)

——防大生は全員、寮生活を送るそうですね。

松田 はい。平日の外出と飲酒は原則禁止です。休日でも寮内で飲酒することはできません。平日は6時起床、22時30分消灯。普通の大学生と同じように授業の時間割がありますが、そのほか食事や入浴、自習の時間まで綿密に決まっています。朝から晩までスケジュールがびっしり組まれており、生活に時間の余裕はあまりありません。

 私がいた頃は朝の点呼時に乾布摩擦を行っていたのですが、男子は冬でも裸。女子はTシャツの着用が認められていました。なお、これもいまは廃止されています。

 乾布摩擦が終わると「解散」の号令で部屋に戻り、そこから清掃の時間です。防大の清掃は一般的な清掃とは比べ物にならないほどのスピード感で、体感的には普通の20倍くらいの速さで進みます。