「防大女子は男でも女でもない」
——当然、男性も女性も同じ内容の訓練をこなすわけですよね。
松田 授業内容はもちろん同じで、総じて女子の方が真面目なこともあり、学科の成績は女子の方が高くなりがちです。「女子は学力的に優秀だ」とは大体が思っているはずです。
ただ、たとえ女子の中では体力がある方であっても、同じ内容の訓練・体力錬成をこなすので、どうしても男子との差は出てきてしまいます。
女性の総合的な体力は、平均的に男性に劣り、関節や骨格、筋肉の構造も異なりますが、そのうえで同じ基準を満たさなければならない。それができないと、一定数の男子学生は、自分より体力が劣る女子学生を一段下に位置付ける場合があります。
——特に陸は体力が必要そうですね。
松田 防大時代に女子がかけられる言葉に、「世の中には3種類の性別がある。男子、女子、防大の女子学生だ」というものがあります。決して「女」とは認められず、かといって「男」にもなれない女子学生のありようを表現している言葉ではないでしょうか。
——どういう時に「認められていない」と感じるのでしょうか。
松田 取材で聞いたエピソードでは、行軍中靴擦れを起こしたとき、荷物を持ってくれた男子から「これだから女は」と言われた、という人がいました。あとは、作戦を考えるときに当たり前のように「お前は見張りでもしてて」と作戦立案に携われなかった人も。
それから、面と向かって、「女子は行軍中、LAMとか持てないんだから、もっと下手に出ろよ」と言われた、という人もいました。
——LAMというのは?
松田 対戦車用のロケット弾の一種で、「110mm個人携帯対戦車弾」の略称です。行軍の時はそれぞれの学生が十数キロある背のう(リュック)を背負い、4キロの小銃を携行します。そのうえで、6人程度の分隊に1つずつ、9キロの機関銃と13キロのLAMを渡され、持ち回りで運ばなくてはならないのです。
ただ、「女子学生だとLAMを持てない」というケースが発生しがちです。男子学生自身も楽とは言えない状況の中、「女子学生がいる分、負担が増えている」とイライラし出すと、上記のような発言が飛び出しがちでした。
体や精神を病む女子学生も…
——心が折れる女子学生もいるでしょうね。
松田 もちろん前提としては「人による」です。心を強く持つ女子学生も少なくありませんが、私は鬱々としていましたね。体は思ったより正直で、1学年の途中から約2年間は生理も止まりました。当時の日記を見るとかなり病んでいたと思います。
女子としての劣等感だけが原因ではなく、様々な要因があるのですが、退校する人、自己肯定感の低下に苛まれて鬱病を患う人、ひそかに自傷行為を繰り返す人もいました。
——同期で支え合う以外に、息抜きはないのでしょうか。恋愛禁止ではないですよね? 次の記事では防大の恋愛事情について聞かせてください。
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