日本の平和を担う約22万人の自衛隊員。その巨大組織において、指揮官として現場を動かすリーダー層が「幹部自衛官」だ。

 1987年生まれの松田小牧さんは、2007年に防衛大学校へ入校。2011年に卒業後、幹部自衛官を目指して陸上自衛隊の幹部候補生学校に進学したが、ほどなく中途退校の道を選んだ。現在はフリーの編集者・ライターとして活動するほか、出版社・月待舎の代表を務めている。

 文字通りの「男社会」である防大。ストイックな規律に縛られた環境下で、若者たちはどのような恋愛を育んでいるのか。知られざる「防大生の恋愛事情」について聞いた。(全4回の4回目/最初から読む)

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防大生時代の松田さん(本人提供)

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昔はタブー視されていた“内部恋愛”

——防大の恋愛事情について聞かせてください。

松田小牧さん(以下、松田) 防大生同士の恋愛は「内部恋愛」を略して、「内恋(ないれん)」と呼ばれます。校則で禁止されてはいませんが、学生綱領には「ここ小原台(編注:防大の所在地)は愛を育む場所ではない」と明記されており、長らく大っぴらに歓迎されるものではありませんでした。いまは時代が変わり、受け入れられていますが。

——当時、それでもカップルは生まれましたか?

松田 そうですね……。当時は9割が男子の中に1割の女子、24時間1つ屋根の下。平日は外出できず、休日にも門限があり、努力する姿を相互に見る。恋愛に救いを求めたくなることもあります。けれど、その対象を外部に求める余裕はなかなかありません。

——なにしろ9対1ですものね……。

松田 私が取材した防大女子の中では「周りに悪影響を及ぼさないなら内恋はOK」という意見が多数を占めていました。

撮影=橋本篤/文藝春秋

——男子はどうでしたか?

松田 どんなに真面目で優秀な女子学生に対しても、内恋をしているとそれだけで侮蔑的な目で見る男子学生は一定数存在しましたね。男子だけで構成される「内恋撲滅委員会」という非公式の組織まであったんです。「幹部自衛官たる資質を涵養する場所で恋にうつつを抜かす人間は、幹部自衛官としてふさわしくない」という論理ですね。

 ですから、内恋が解禁されたと聞いたときは「私たちの青春はなんだったんだ!?」と衝撃を受けました。でも、それがあるべき姿だと思います。もちろん、「節度を持って」とは言いたいですが……。

 私たちの時代、食事は一斉喫食(大隊ごとに定められた位置で食事する)でしたが、いまは原則自由喫食。カップルで食べている学生もいて、「普通のキャンパスライフじゃん!?」と本当に驚いています。