厳しい指導が消えた弊害

松田 個人主義や多様性といった、現在一般的に尊ばれている概念は実力組織とは相性が悪い。自分の頭では「これは間違っている」と思ったとしても、指揮官と一兵卒では与えられた情報も視野も異なります。実際の戦闘で各人が自分の思うように動けば、それは部隊の全滅につながりかねません。

 ですから、実力組織においては、「自分が『理不尽』だと感じる命令を受け入れることも必要」なんです。想像してみてください。まったく怒られることのない“優しい実力組織”が前線に立つ場面を。国民が、そのような組織に命を預けることを。

撮影=橋本篤/文藝春秋

——なかには一般社会に同調しすぎるのも考えものという意見もあるんですね。

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松田 いまの防大では、厳しい指導ではなく、言葉で心服させる方針です。しかし、それはなかなか容易なことではないでしょう。

 自衛隊は他国から見ても極めて規律正しく、レベルが高い実力組織ですが、その裏には、国防の志を大して持たずに入ってきたような若者を一定レベルまで引き上げてくれた厳しい上官が往々にして存在していました。

ゼミでは座学も実施される(本人提供)

——今後、“防大女子”が直面する問題ですね。

松田 現代の価値観との擦り合わせが非常に難しい時代に自衛隊は置かれていると思います。いまの防大生たちが実際の任務にあたった時、メンタルダウンする人が増えるのではないかと危惧する声も聞かれます。

 いまの防大は、「誰もが尊敬するような人格を有する幹部自衛官」を育てる学校ではなく、「平均点を取れるくらいの幹部自衛官ばかりを出している」との指摘もあります。

 また、防大生からしても「防大に来てよかった」という声も大きい一方で、「想像していた環境とは違った」「一生を捧げる組織ではない」と話す学生もいます。「優しい防大」が育てた幹部自衛官が部隊でどう活躍していくのか、これから注視していきたいと思います。

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