インフレの「第二ステージ」とは

 渡辺氏が注目するのは、これから迎えるインフレの「第二ステージ」だ。著書『インフレの時代』(中公新書)では、2022年から現在までをインフレの第一ステージ、これから10年を第二ステージと位置づけている。

「価格メカニズムという言葉があります。好調な企業が賃金をぐぐっと上げ、それをめがけて周辺の労働者が移動していく。人が集まることで、その企業はさらに栄え、地域全体も栄えていく」

 

 デフレ期にはこのメカニズムが機能しなかった。しかし今、ようやく動き始めている。渡辺氏は、かつての旧共産主義・社会主義圏が資本主義に移行し、価格メカニズムを手にしたことで急成長した例を引き合いに出す。

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「日本も同じように、急成長する可能性がある。若い労働者はより意欲を持つようになり、企業は先進的な技術を取り入れるようになる。活力が取り戻せるという意味での急成長への素地が、徐々に整いつつあるのではないか」

賃金の低い企業にぶら下がっても…

 実際、人材の流動性も高まり始めている。かつて「日本的」と言われるほど低かった労働のモビリティが、今は変わりつつあるのだ。

 

「賃金の高い企業と低い企業の差が出てきており、人の移動も始まっています。人手不足もあり、賃金の低い企業にいつまでもぶら下がってもしょうがないと考える人が増えている」

 渡辺氏は、この流れが加速していくと見る。儲かる企業に優秀な人材が集まり、新陳代謝が進む。それが日本経済の活力を取り戻す原動力になりうるという。

次の記事に続く 「デフレ期は“賃上げなしの平等”だったが…」東大名誉教授が警鐘を鳴らす、「格差拡大」と「企業淘汰」を避けられない「インフレ第2ステージ」の影