アメリカの「失敗」に学べ

 渡辺氏は、アメリカが陥った分断社会を日本が避けるためには、政治の力が不可欠だと強調する。

「アメリカはインフレが進む中、中国をはじめとする外国に対して完全に国を開いた。いろんな商品がどんどん外から入ってきて、アメリカ国内で商品を作っていた人たちは仕事を失った。それがトランプ支持者を生む背景になった」

 

 日本はアメリカほど極端なことはしてこなかった。その結果、経済は停滞したが、雇用は守られた。しかし、今後インフレが進む中で、方向性としては同じような課題に直面する可能性がある。

ADVERTISEMENT

「あまりにもデフレを長くやりすぎてしまって、今はそこから変革しようとしている。アメリカほどのことはないにしても、同じようなことが今後日本にも起きる。だからこそ、あちらの失敗をよく見て、そうならないようにすることが非常に大事です」

インフレ下では政治の役割が変わる

 渡辺氏は2022年から現在までのインフレを「第一ステージ」、これから10年を「第二ステージ」と位置づける。第二ステージでは、価格メカニズムが機能し、経済が活性化する。しかし、それは同時に格差拡大や企業淘汰を伴う。だからこそ、政治の役割が重要になる。

 

「賃金の格差があまり開かないようにする、あるいは賃上げの流れに乗れなかった人たちに対して、何かの形で手当てをする。これまでは必要なかったような格差対策を、政治は対応しなければいけない」

 渡辺氏は、今後10年は「今までとは違う形で政治、あるいは政府の役割が出てくる」と語る。企業の淘汰をゆっくり進めるための支援、賃金格差を緩和するための再分配政策——。こうした取り組みなくして、インフレのもたらす「前向きな変化」は、社会の分断を招く結果に終わってしまう。

最初から記事を読む 「賃金の低い企業にいつまでもぶら下がっても…」物価研究の第一人者が語る、今後10年「インフレの時代」で生じる日本の“急激な変化”