私が最初座っていた12列からも死体が掘り出されていた
火はいよいよはげしく燃えさかり、このころようやく手持ちの消火器をもって駆けつけた人々の手にはとうていおえそうもない。私は万一誰かが機内に残っていたら救出しなければと思い荷物を広瀬さんに託して機に近づいた。しかし、機内はすでに溶鉱炉のように真っ赤に燃えており、救いを求める人影は一つも見当らなかった。
「よかった。皆助かったようですね。機内に誰もいない。」
私はほっとして広瀬さんにそう言い、このすさまじい事故からカスリ傷一つなく脱出できた幸運を改めて祝福し合うのだった。そして、この燃える飛行機を背景に入れてたがいに記念の撮影までしたのだった。
しかし、まもなく私たちは楽天的でありすぎたことが分かった。ひとりの男がジープに取りすがってはげしく泣いていた。家族が出て来ないのだという。あわてて誰彼となく聞いてみるとたくさん死んでいるという。そういえば皆の脱出時間が意外に短かった。残余の人々は墜落のショックでやられ、機体から出られず声もなく焼かれているのか。私はふたたび火に包まれた機をふりかえった。もうどうすることもできぬ末期的な有様で、私たちの座っていた機の前方も完全に火に包まれている。オランダ人の神父さんが助かったのは私の目で確認している。あの人の好い中国人のヨーさんは? まわりをいくら探しても見当らない。12Eの席で死んでしまったのだろうか。
私たちはひどくのどが渇いていた。空港の休憩室で飲物をもらうとむさぼるように飲み干した。そして新聞記者のインタビューを終えると私はもう一度機のほうへ歩いていった。機は尾翼を残して、あとかたもなく燃え崩れていた。そして早くも死体の搬出が始まっていた。見るかげもない無残な黒焦げ死体が、私の最初座っていた12列からも掘り出されていた。
