「死刑囚の妻」役で見せた“純粋さと狂気”
それだけに、翌年放送のドラマ『坂の上の赤い屋根』(WOWOW)での純粋さと狂気が入り混じった演技には驚かされた。蓮佛が演じたのは死刑囚に心酔し、獄中結婚を果たす法廷画家の礼子。家庭内で不遇を強いられ、仕事も鳴かず飛ばずの礼子は死刑囚の妻であることで自分を特別な人間だと思い込もうとする。喉から振り絞るような声、一点に定まらない視線、常に緊張しているように吊り上がった肩など、蓮佛は台詞以上にその一挙一動で礼子の陰鬱さや自信のなさをありありと表現していた。死刑囚である夫への気持ちも最初はピュアなのだが、さまざまな要因が重なり、後半に進むに連れてどんどん狂気のボルテージが上がっていく演技も圧巻だ。
演技の引き出しの多さは間違いなく蓮佛の武器であり、どんな役柄もハマり役と言わしめる実力がある。そんな蓮佛は役づくりについて、「どの役でも、その役の人生を一回、脳内一人芝居するんです。どんな子供時代や思春期を過ごしてきたのか、自分なりに考えながら」(※2)と語っている。
別のインタビューでは「私はどの役に対しても、とことん掘り下げてから現場に入るタイプなんです。そして現場で全部忘れる」(※3)とも。つまり、自分の中で役の人生録を作り上げ、インプットしつつも、撮影現場ではそれに固執することなく柔軟に演じるということ。素人が想像する限りでも、かなり高度な技をやってのけている。だからこそ、蓮佛の役には圧倒的なリアリティがあり、そこに演出や対峙する役者の演技が加わった時に見事な化学反応が生まれるのだろう。


