5歳でオウム真理教に出家、教団施設で幼少期を過ごした加奈さん。麻原彰晃の逮捕によって養護施設に保護されるが、以降も濃淡こそあれど、教団との関わりを続けてきた。そんな彼女が教団から完全に離れてから15年以上が経つ。現在40代になった加奈さんは、地方都市で働きながら3人の子どもを育てるシングルマザーだ。
かつて激しく衝突した母親とも和解し、平穏な日常を取り戻したように見える。しかし、今も様々な不安から逃れることはできていないそう。『オウム真理教の子どもたち 知られざる30年』(集英社インターナショナル)の一部を抜粋し、カルトの過去を背負いながら、親として生きる彼女の現在地に迫る。
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“普通”じゃなくてもいい
2009年頃、母親の春代さんと加奈さんは、祖母のケガをきっかけに、生まれ故郷の地方都市に戻った。このときに、春代さんは脱会届を出したと話しているが、加奈さんは知らない。それ以来、親子は教団との関わりを一切持っていない。
加奈さんは地元の会社に就職したが、以前のようにすさんだ生活を送ることはなくなった。オウムにいた過去、春代さんとの関係性、すべてを受け入れ、自分の力で生きていくしかないと覚悟を決めたのだった。
「親の人生と自分の人生は違うので、自分は自分で立って生きて、道をつくっていかなきゃいけないということが、中高生のときにはできないし、わからないと思うんですよ。でも、いつかは親の人生と切り離して生きていかなきゃいけない。親に影響される部分もあるし、育ってきた環境がオウムなので、その影響を受けることもあると思うんですけど、そのなかで、自分で決めて自分で生きていくことが大切だとわかったんです。いつまでも親の人生に引っ張られるのはちょっと違うよね、と思うんです」
物事がうまくいかない理由をオウムにいた過去に求め、一時期は春代さんを責めることもあった加奈さん。25歳を過ぎた頃から、「別に“普通”じゃなくてもいいか」と考えを改めるようになった。社会に出て長く働くなかで、さまざまな背景を持つ人たちと出会ってきた。オウムにいたことも、そうした特殊な経験のひとつだと受け入れられるようになったのだ。
そして何より、加奈さん自身の努力もあった。
