チームが引き締まった、イチローの「ある行動」

 そうしたらイチローさん、いきなり大きな声で「おーっ、まっちゃん」って(イチローと同学年の)松中(信彦)さんをイジったんです。そこでまたみんながビビって……だって三冠王の松中さんですからね。その松中さんがイチローさんに圧倒されているんですから、どんだけすげえんだって話ですよ。

 僕はこれまで通り、普通に挨拶して喋りましたが、そもそも若い選手が多かったこともあって、イチローさんと普通に話のできる人がチームに少なかった。理由はそれだけではなかったと思いますが、あのチーム、最初はひとつになってまとまっている感じがまったくありませんでした。

第1回WBCのあと、松坂とイチローはメジャーリーグで何度も勝負することになる ©文藝春秋

 その風向きが一変したのは、イチローさんが合宿初日からエンジン全開だったことが大きかったと思います。時差もあったはずだし、ゆっくり調整するのかなと思いきや、ウォームアップから先頭を切っていきなりの全力疾走……あの姿を見てみんな、『こりゃ、本気だな』と思わされたはずです。

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 イチローさんのWBCに懸ける想いは十分に伝わってきました。じつは僕、あのとき『イチローさんっておもしろいな』と思ったんです。だって、僕なりにイチローさんってこういう人だというイメージは持っていましたが、初めて同じチームでプレーしてみたら自分が知らないイチローさんがいた。こんなイチローさん、見たことない、こういうイチローさんもいたのかって……イチローさんってホントにおもしろい人だなって、そう思ったのを覚えています。

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