「WBCってこんなものかと思っていました」
第1回WBCで獅子奮迅の活躍を見せ、MVPにも輝いた松坂大輔は当時をこう振り返る。
日韓戦に敗れて勝ち上がりが絶望的な中、奇跡的に準決勝への進出を果たして韓国との再戦に勝利。さらに当時「赤い稲妻」と呼ばれ恐れられていたキューバを下して優勝を果たすなどドラマティックな展開が多かった大会の中で、松坂が感じていた寂しさの正体とは何だったのか。『松坂大輔 怪物秘録』(石田 雄太著、文藝春秋刊)から一部抜粋してお届けする。(全4回の2回目/続きを読む)
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「WBCってこんなもんか」と思った
WBCでの僕の登板は3度。最初は東京ドームでの第1ラウンドの台湾戦、2度目はアナハイムでの第2ラウンド、メキシコ戦。そして決勝のキューバ戦。メジャーのボールは滑るし、WBCならではの球数制限もあって、普段と勝手が違うことはいろいろありました。
メキシコ戦は負けたら準決勝進出の可能性がゼロになる土壇場でしたが、僕にとってはすごく静かな試合だったというイメージがあります。
タッチアップ騒動もあったアメリカに負けて勝つしかない試合でしたが、雰囲気も内容も盛り上がった感じはしませんでした。観客の少なさ(1万6591人、アメリカ戦は3万2896人)に寂しさを感じたからなのかもしれません。日本では一気に盛り上がってきたという話は聞いていましたが、WBCってこんなものかと思っていました。
それでも僕の状態はすごくよくて、キャッチャーの里崎(智也)さんも『今日はボールが来てる』と感じていたんでしょう。ストレートのサインが多くて、僕の感覚とも合っていたのでリズムよく投げられました。2回、ランナーを三塁へ進めたピンチでも、僕、めちゃくちゃストレートを続けたんです。
里崎さんもスライダーを1球も挟むことなく、ひたすらまっすぐ。2人のバッターにストレートを10球続けて、空振り三振とセンターフライに打ち取りました。日本は6-1でメキシコに勝って、準決勝進出への望みをつなぎます。
ところが日本は次の韓国戦に敗れて、準決勝進出が絶望的になってしまいました。
