日本の政界や学会を疑問視する記事も
伊藤に関しては、これもニューヨークタイムズが2月末に詳細な記事を掲載した。『エプスタインの側近が日本でキャリアの再生を果たした経緯』(How a Close Associate of Epstein’s Found Career Redemption in Japan)には、「高市早苗首相とその側近が推進する政府の取り組み」である“グローバル・スタートアップ・キャンパス構想(GSCI)”を率いるのが伊藤であること、MITを含む他国の大学は伊藤の関与ゆえにGSCIから距離を置いていることが記されている。
記事には伊藤が2013~14年にかけて「エプスタイン島」を複数回訪れた、もしくは訪れる計画を持ったなど、伊藤とエプスタインの親密な交流が記されている。しかし、記事全体としては伊藤本人よりも、伊藤の過去を追及せず登用し続ける日本の政界、学会、さらには広報業界の体質を問う痛烈なトーンとなっている。
この記事が掲載された同日、千葉工業大の学生がオンラインの署名活動を開始した。「千葉工業大学 学長 伊藤穰一氏の騒動について、第三者を交えた再調査の実施を要望します」と題したもので、合計2万筆近くが集まっている(3月5日現在)。
「恐ろしい行為を目撃したことは一度も…」
こうした事態を受けてか、伊藤は3月3日に自身のXで声明文を発表した。声明には、エプスタインの「自宅を訪問」したのはMITの資金調達が目的だったとある。加えて「明らかになっているような恐ろしい行為を目撃したり、その証拠を認識したりしたことは一度もなかった」「そうした事実を認識していたならば、間違いなく一切の関係を断っていた」と、犯罪行為への関与を否定。
エプスタインについては「2009年に服役を終えて一般社会に復帰し、米国大学の研究者を支援していた」としているが、その罪状が18歳未満に対する売春勧誘であったことは書かれていない。大学という教育機関への寄付を、未成年への性犯罪者から受け取ることをどう考えていたのだろうか。
いずれにせよ、この声明でGSCIについては3月末で任期満了であり、大学の「学長職に専念するため」、デジタル庁のデジタル社会構想も同日に退任するとしている。これにより日本政府は伊藤への聞き取りを中止すると発表した。
