記憶、指先……戸郷が間近で見た、菅野智之の「凄さ」

 2025年にメジャーリーグのオリオールズにFA移籍した菅野智之投手の「何が、どうすごいのか」。表面的に言えば、150キロのストレートとスライダー、そしてフォークボールを抜群のコントロールで操り、最多勝や最優秀防御率のタイトルを各4度獲得、MVP3度、沢村栄治賞を2度受賞。

 タイトルや賞を総なめにするだけあって、自分が投げた試合の配球を1球目からほぼ全球覚えています。そればかりか、「翔征のあの場面での配球はこうだったけれど、どういう考えでアプローチしたのか」と聞いてくるなど、とても細かい場面やポイントを見逃さない、驚異の記憶力でした。

 スポーツニュースで見たことがある人も多いでしょうが、「今から140.5キロのボールを投げるぞ」と予告して、予告通りの小数点以下までぴったりの球速のボールを実際に投げるのです。マジシャンのようなことを平気でやってのけるなど、指先の微妙な感覚が傑出していました。

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 技術はもちろん、野球に取り組む姿勢が素晴らしかったです。「現状維持は退化だ」という言葉は菅野さんから教わりました。トレーニング方法にしても、他人から学べるものがあればできる限り積極的に採り入れようという姿勢が、菅野さんからは常にうかがわれました。

 僕のような年下にもフォークボールのことを聞くのです。ピッチャーではなく、バッターの人にも尋ねるのです。みずからが変化、進化するために積極的でした。もちろん、後輩の僕にいろいろなことを惜しみなくアドバイスしてくれて、本当にありがたい存在でした。

WBC2026では、2017年大会以来、2大会ぶりに日本代表に選出された菅野 ©文藝春秋

菅野と過ごす中でさまざまな「気づき」を得た

 僕は田舎育ちなので、幼いころから川泳ぎを楽しんでいて、いつの間にか肩や広背筋が鍛えられたようです。自然と肩が強くなったのか、高校1年の冬には遠投大会で117メートルを記録したのは、先述した通りです。

 2023年からはジャイアンツ球場での練習で水泳を採り入れました。クロールや平泳ぎで、肩のケガ予防やインナーマッスルのトレーニングに努めています。

 あの20年8月4日以来5年間、毎年必ず菅野さんとキャッチボールをさせてもらい、いろいろな学び、気づきを得ました。