WBC2026日本代表には、何人ものメジャーリーガーが参加している。その1人が、コロラド・ロッキーズの菅野智之だ。2024年シーズンまで読売ジャイアンツのエースとして活躍してきた菅野の愛弟子である戸郷翔征による書籍『覚悟』(講談社)から一部抜粋し、菅野が明かした「エースの条件」をお届けする。(全2回の2回目/前回を読む

WBCに出場するのは2大会ぶりとなる菅野智之 ©文藝春秋

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「菅野が抜けた穴」は大きかった

 自分でどうしたらいいかわからない。人生の中であんなに悩んだ期間は初めてでした。今思えば、そこまで自分を追い込む必要はなかったのかもしれませんが……。

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 ピンチを脱する“引き出し”が僕自身の中に少なかったのですね。これまでも試合中にピンチを迎えたり、シーズン中に不安になることは何度もありました。しかし、勝敗が勝ち越している中で(現役通算7年63勝44敗)、何となく気持ちも勝ち越していたというのか、余裕がありました。そんな中での不安というのは大した不安ではなかったのだと気づきました。

 2025年でプロ7年目。結果的に初めて負け越したシーズンでした(8勝9敗)。繰り返しになりますが、これだけ長く勝ち星が付かなかったのは初めてなんです。これまで先輩の坂本勇人選手や菅野智之投手ら、投打の柱が不調で悩んでいる姿を目の当たりにしてきたことを思い出しました。

 先輩たちは気持ちを切らさずにやって、たしかな成果を出していました。「苦しい中でも一筋の光明を見つけ、責任を持ってやることが大事だ」と、自分の身に起きて初めて痛感させられたのは大きな収穫でした。明けない夜はないのです。

2025年シーズン、戸郷はスランプと言っていいほど不調に陥った 写真提供=講談社

 もし今後、不調が訪れても、今回のことを一つの体験、引き出しにして、大きな動揺はしないだろうと、ポジティブに考えます。

 2024年に15勝でMVPを獲得した菅野智之投手が抜けた分のプレッシャーが僕の双肩にかかってくることは、菅野投手がFA移籍した時点でわかっていたことです。やらないといけない思いは春季キャンプから強かったですが、やれなかったことへの後悔はたくさんありますし、責任は痛感しています。