なぜ、これほどまでに台湾は盛り上がっているのか

 それにしても、台湾の野球ファンは、なぜこれほどまでに日本戦に熱狂するのだろうか。

 日台100年の野球交流史をひもといた新著『白球は海を渡る』(筑摩書房)を2月に上梓したジャーナリストの野嶋剛さんは、次のように話す。

「今回の熱狂の背景には、2024年11月のプレミア12での初優勝があります。あの興奮は日本人の想像の100倍はあるでしょう。興奮の理由は何より、相手が日本だったからです」

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 2024年11月に東京ドームで決勝戦が行われた国際大会のプレミア12にて、台湾代表は日本を破り、初優勝を果たした。WBCや五輪なども含む国際野球大会での初の栄冠に、台湾国内は社会現象ともいえる「Team Taiwan」(チーム台湾)フィーバーに沸いた。

2024年の「プレミア12」では、侍ジャパンを破り優勝した台湾代表 ©鈴木七絵/文藝春秋

「皆さんは台湾の光です。台湾には半導体だけでなく、野球もあることを国際社会は知るでしょう」

 台北市内で行われた優勝祝賀パレードの終点、総統府で出迎えた頼清徳総統は、このように選手たちを称えたのだった。熱狂が冷めない中、台湾の500元紙幣の図柄を、現在の野球少年たちが描かれたデザインから、プレミア12優勝にちなんだデザインへと変更を期待する声まで上がった。

 2026年1月1日には、プレミア12優勝までの過程を描いたドキュメンタリー映画『冠軍之路』が公開され、興行収入が2月初旬に8000万台湾ドル(約3億9840万円)を突破する大ヒットを記録。頼総統や蔡英文前総統も鑑賞したと伝えられている。

侍ジャパンにとって「因縁の相手」ともいえる台湾代表とは初戦で相まみえることになる ©鈴木七絵/文藝春秋

 歴史を振り返ると、明治時代の初期に米国から日本に伝わった「ベースボール」は、その後「野球」と翻訳され、1895年の日本による台湾の植民地統治の始まりとともに、台湾に伝わった。台湾の人々が野球に自然に親しむようになると、それを日本側は植民地統治の「利点」として見いだしたと、野嶋さんは『白球は海を渡る』で指摘する。

 歴史に翻弄されてきた台湾において、野球は人々を団結させ、国際社会で伍して戦える唯一無二の国家的スポーツへと進化していった。

「長年、野球の“師匠”であり、“兄”でもあった日本に追いつけ追い越せという気持ちでやってきて、ようやく大舞台で勝てたのは大きいでしょう」(野嶋さん)