警察が燃焼実験を行い、タバコによる失火で激しい火災が起こりうるか調べたところ、タバコの火が激しく燃え広がるまでには約40分を要することがわかった。歌舞伎町ビル火災では、わずか10分ほどの間に激しく燃え広がっていることから、タバコによる出火の可能性は低いとみられたのだ。しかし、タバコが落ちた部分に燃えやすい素材がある場合などには、短時間で燃え広がる可能性もあり、完全には否定できなかったという。
ある捜査員は、「過ちによる失火なのか、誰かが故意につけた放火なのか、そこをしっかり判断しないと、その後の捜査は間違った方向に進んでいく。ここを間違えるわけにはいかない。だから、断定できない場合には、正直に断定できないと報告せざるをえない」と唇をかみしめながら語った。
「放火の可能性が高い」という結論が下されたのに…
警察と消防の調べの結果、最終的に「放火の可能性が高い」という結論が下された。
捜査のバトンは、警視庁捜査一課の殺人事件担当の刑事たちに渡っていく。しかし、ここでも火災ならではの難しさが立ちはだかった。
「あの事件は、(捜査の)武器がなかった」
ある元捜査幹部はじっと遠くを見つめ、あの火災について振り返った。現場の証拠は火炎で焼き尽くされており、指紋や足跡も消火活動の放水によって流されてしまう。
「救助と消火活動が最優先なのは当然なのだが、現場はどんどん壊れていく」
そんなジレンマがあるというのだ。さらに、通常の殺人事件と違い、マッチやライターがあれば火を付けられる放火事件には、基本的に凶器が存在しない。そのため、凶器の入手ルートからの捜査もできない。また、放火犯は、基本的に誰かが見ている場所では火を付けない。おのずと目撃証言も限られてくる。




