低額に抑えられていた、女流棋士の対局料
かつて、女流棋士の対局料は低額だった。1980年代の女流棋界をリードした林葉直子さん(58歳)はテレビ番組に出演し「タイトル料は30万円で、とても将棋の対局だけではやっていけなかった」と告白したこともある。
女流棋士のタイトル料が低く抑えられていたのは、棋力に見合った報酬という考えもあったと思われるが、近年、女流棋士の増加とともにレベルも向上し、棋戦の数も増加。それにともない賞金額も上昇し、女流のタイトルホルダーが年間数千万円の対局料を稼ぐことができる時代になった。
「女流棋士が男性のプロ棋士より多くの賞金を得ることに対して、おかしいという声を耳にします。ですが、当事者としては『なぜ?』と思います。女流棋士の価値を認めてくださるスポンサーがいて、その将棋を見たいというファンの方々に支えられている以上、私たちはその期待に応えることに集中すればいい。ただ、高額の賞金をいただくわけですから、それにともなうさまざまな責務が大きくなることは言うまでもありません」
白玲戦に設けられていた「新規定」
論点はそれだけではない。福間が不戦敗を余儀なくされた白玲戦には、昨年6月から「クイーン白玲で棋士資格を認める」という新規定が設けられている。通算5期を獲得してクイーン白玲の称号を得れば、プロ棋士になる権利が発生するのだ。
「女流棋士」と「棋士」は別の制度であり、将棋界の長い歴史において、女性の「棋士」は一人も誕生していない。もし女流棋士が白玲のタイトル獲得を重ねて、この権利を行使すれば、史上初の「女性プロ棋士」が誕生することになる。
福間が不戦敗を余儀なくされた白玲戦は、5000万円の賞金に加え「棋士になる権利」という大きなオプションまで付与された、女流のトップ棋士にとって特別な価値を持つタイトル戦になっているのだ。
もっとも、この「白玲5期で棋士編入」というルールの導入には異論がなかったわけではない。将棋界では伝統的に、奨励会と呼ばれる養成機関を経たルートを重視してきた歴史がある。藤井聡太竜王・名人が、棋士総会の席で「棋力の担保は取れているのでしょうか」と発言したことが週刊誌上で報道され、話題になったこともあった。
とはいえ、女性棋士の誕生が現実味を帯びている以上、将来的に女性がプロ棋士の一般棋戦に参加する際の可能性は考えておかなければならない。男性棋士とまったく対等な立場で戦う時代が訪れたときに、妊娠・出産する女性だけが「不戦敗・対局料ゼロ」になるとすれば、そこには明確な不公平が生じることになる。




