女流棋士の福間香奈女流五冠(旧姓=里見、34歳)が、妊娠・出産に関するタイトル戦出場規定の見直しを訴え、記者会見を開いたのは昨年12月のことである。
女流棋界の第一人者として知られる福間の会見を受け、日本将棋連盟は謝罪と一部の規定削除を表明。この問題に関する検討委員会を立ち上げ、今年4月末までに答申を出す方針だ。(全3回の1回目/つづきを読む)
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「妊娠か、タイトルか。どちらか選択する制度ではなく、両方が目指せる世界にさせていただきたい」
記者会見の席上、福間はそう訴えた。その主張は、昨今の女流棋界を取り巻く環境の激変とあいまって、単なる対局規定の問題を超えた女流棋士の存在意義をも照射する重要な提案となっている。
出産を控えた福間から相談を受けた
「私が福間さんと話をしたのは2024年秋のことでした」
そう語るのは、女流棋士歴45年、タイトル19期の実績を持つ中井広恵女流六段(56歳)である。
当時、第一子を妊娠していた福間は、8つある女流タイトルのうち6冠を保持。さらに残る2つのタイトル戦にも挑戦者として名乗りを上げていた。
出産を控える身でありながら、過密な日程で組み込まれたタイトル戦をどう戦っていけばいいのか。福間は複数の女流棋士に相談を申し入れ、将棋連盟との交渉法を模索するべく、意見を求めていた。中井はタイトルを保持しながら出産を経験した唯一の女流棋士だった。
「後輩たちに“大きな宿題”を残してしまった」
「当時、彼女が焦りと不安を抱えていたのは明らかでした。女流棋士の出産に関する制度がこれまで整備されていなかったことは、先輩である私たちの責任でもあり、大きな宿題を残したまま現在に至ったことについては、申し訳なく思っています」
福間の記者会見を受け、中井はいまこう考えている。
「妊娠・出産時のタイトル戦出場規定は作らなければいけない。その一方で、彼女がいま将棋連盟に求めているいくつかの要望については、できることと、できないことがあるように思います。難しい問題ですが、かつて同じ経験をした女流棋士として、傍観者ではありたくない。これを機に十分な議論がなされるべきだと思います」





