アメリカと日本で感じた「野球への緻密さ」の差
つい最近、メジャーの選手が緻密さを欠いていることを、イチローが改めて思い知らされるような出来事があった。マリナーズのセンター、ジェレミー・リードが7月2日に故障して、そのポジションにマイナー上がりの秋信守、ユーティリティ・プレイヤーのウイリー・ブルームクィスト、2003年のドラフト1巡目、アダム・ジョーンズの3人が入った時期があった。
ライトのイチローとしては、センターの選手が入れ替わるたびに、コンビネーションを確認しなければならない。センターとライトの約束事は、一つだけ。それは、センターが声を出したら、必ずセンターが捕る、というもの。その約束事を確認するために、イチローは試合前、フライを捕る練習を行っていた。ボールが右中間に上がり、センターが声を出す。
“I GOT IT! I GOT IT!”
イチローは、そのセンターの声にかぶせるように、わざと大きな声を出す。
“I GOT IT! I GOT IT!”
すると、イチローの声に惑わされたセンターは一瞬、引いてしまう。センターが声を出したら捕るのはセンター、という約束事を決めているのにもかかわらず、である。
「だから、センターが声を出したら、センターが捕るというのが約束事だろう」
試合中、歓声で掛け声がかき消されるケースもあれば、ほぼ同時に声を出してしまうことだってある。
そういうときのために、イチローはセンターが声を出すのとほぼ同時にわざと声を出してみせているというのに、センターはいともあっさりその声に惑わされてしまう。どれだけ身体能力の高いプレイヤーがセンターを守っていたとしても、これではライトとのコンビネーションは成り立たない。
逆に、日本の選手の緻密さにイチローが改めて驚かされたこともあった。WBCの日本代表でチームメイトになった川﨑宗則や西岡剛に対して、イチローはさまざまな問いかけをしてみた。
たとえば、一塁ランナーとしてリードをするとき、セカンド方向へ身体を振るシャッフルのタイミングをどのように考えるか――イチローのこの問いかけに対して、川﨑も西岡も、「バッターがボールをミートする瞬間、宙に浮いているタイミングでシャッフルしている」と、即答したのだという。イチローは驚いていた。
