第1回WBC制覇の瞬間、日の丸に包まれながら王貞治監督と抱き合ったイチロー。その歓喜の裏で、彼は何を背負い、何と闘っていたのか――。ベースボールジャーナリスト・石田雄太氏の著書『イチロー・インタビューズ完全版』(文春文庫)より一部を抜粋し、世界一の翌日に明かされた覚悟と苦闘の日々に迫る。(全3回の2回目/3回目に続く)

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WBC制覇の翌日、イチローを待っていたのは…

 イチローと王貞治が抱き合った。その時、風がイタズラをして、イチローが手にしていた日の丸が、二人をふわっと包み込んだ。日本がWBCを制覇した直後の、あまりにもできすぎた光景――世界一の歓喜の渦に包まれたイチローはその翌日、いつもの時間が流れる静かな場所に戻っていた。そして、熱い言葉と頼れる背中で日本を牽引した激闘の日々を淡々と語り始めた。イチローはなぜこれほど日本のことを想って戦ったのだろう。

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 世界一のシャンパンに酔いしれた翌日。

 サンディエゴからアリゾナにある自宅へ戻ったイチローを待っていたのは、妻の弓子さんが用意していた世界一を祝うケーキと、とっておきのワインだった。

「昨日は、どれくらいの人が見ていてくれたのかなぁ……」

 その数字が瞬間的に56%にまで達していたと聞いて、イチローは嬉しそうに笑った。

 和やかな空気が漂っていた。

 特製のケースに収められた金メダルが台の上に置かれていた。その傍らに、もう使うことのない選手用のIDカードが置いてある。

 満足感と、解放感――。

 スーツケースの上には、決勝戦で着たジャパンのビジター用のユニフォームがかけられていた。グレーのズボンの左ヒザには、ホームに滑り込んだとき、キューバのキャッチャーがつけていた青いレガースと激突したことを示す青い色がこびりついていた。

 まさに、激戦の痕だった。