「寮でも、ちょいちょい正尚さんの部屋に行って話しかけたりしていました。なかなか後輩が先輩の部屋に遊びに行くことってないと思うんですけど、僕は気にしていませんでしたね。いや、僕だけじゃないです。僕らの代は、割と気軽な感覚で正尚さんの部屋に遊びに行っていました」

 先にも述べたように、当時の西川は吉田のことを尊敬していた。しばしば部屋に顔を出していたのも、そんな理由からである。

「高校に入った頃、僕はあんまり他人のことをすごいと思ったことはなかったんです。でも、正尚さんは別格でした。まず、練習量がすごかった。打球の音も違ったし、もちろん飛距離も桁違いでした。三振はしないし、ヒットの確率も高かった。練習試合では試合のたびに2~3本はヒットを打っていて、そのうちの1本はホームラン。極端に言えば、それぐらいのイメージでヒットを量産していましたから」

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 手放しでの大絶賛が続く。西川は続ける。

「正尚さんはいろいろな道具を持っていたので、よく部屋に行って、それを借りたり、もらったりしていました。普通、先輩の部屋には行きたがらないじゃないですか。僕も、正尚さんだけです、部屋まで行くのは。物をもらいに行ったついでにおしゃべりをして帰る。本当にしゃべりやすい先輩でしたから。壁がない人なんです、正尚さんは」

 2学年上の山田が「僕のことを先輩だと思っていない」と言っていたことを思い出す。吉田は先輩だけに限らず、後輩についても分け隔てなくつき合うことができる稀有な人なのかもしれない。先輩を先輩だと思わないように、後輩を後輩だとも思わない。つまりは、自分と他者との間に壁を作らない。そんな人間なのかもしれない。

「本当、そうだと思いますよ。正尚さんはまったく先輩面をしないし、いわゆるシバキなんか絶対にしなかったし。ただ、こんな言い方はアレですけど、そもそも他人に興味がない。そんな気もしますけどね(笑)」

写真はイメージ ©Wakko/イメージマート

「自分のやりたいことをとことん追求する。正尚さんは、そんな人だと、僕は思います」

「他人に興味がない」というのは、ゆり香夫人が何度も口にしていたフレーズだ。やはり、吉田の本質は「他人に興味がない」というのが大きな特徴なのだろうか?

 そんな質問を投げかけると、西川は大きくうなずいた。

「人に興味ないと思います。練習でもそうですけど、我が道を行く。それが正尚さんです。別に他の誰かが何をしていようと、自分は自分の決めたことをひたすら続けていく。自分の決めた道をひたすら突き進んでいく。自分のやりたいことをとことん追求する。正尚さんは、そんな人だと、僕は思います」

 ゆり香夫人も、山田修義も、そして西川龍馬も、まったく同じことを言っている。身近に接してきた人々が共通の印象を抱いていることが、私にはとても面白かった。

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