彼女の大きな特徴は、『僕に何も求めてこない』ことでした。彼女は『結婚したい』と口にはしていましたが、僕に『結婚について、どう思う?』とか『いつ結婚するの?』とか聞いてこない。言いたいことだけ言って、それで満足してしまう。僕に答えを求めないんです。その距離感が、僕にはものすごく心地よかった。だから、自然と一緒にいる時間が増えていって、気づいたら彼女と結婚することになっていました」
「結婚してみてもいいか」
当時、関川さんはサラリーマンだったが、将来的には自分で会社を興したいと考えていた。
「付き合っている男が『独立したい』と言い出したら、女性は心配するじゃないですか。特に結婚を考えている相手であれば。でも、彼女は何も言ってこなかった。
正直に言えば、結婚を決意するような明確な理由があったわけではありませんでした。彼女の家族ともよく食事に行くようになって、気づいたら周りの環境が全部整っていて、『ここから逃げるくらいなら、もう結婚しちゃおうかな』みたいな感じでした。
もし彼女が、ぐいぐい結婚を迫ってくるタイプだったら、僕は絶対にしていなかったと思います。でも彼女は、そういう圧を一切かけてこなかった。結果的に、それが僕を結婚へと動かしたんでしょうね。
今思えば、彼女はとても賢かったと思います。僕みたいなタイプと付き合うには、それが最適解だったのかもしれません」
結婚後も、お互いに干渉することはなく、穏やかな夫婦生活が続いた。いざ結婚をしてみると、妻と2人で過ごす時間は、とても幸せなものだった。結婚生活の素晴らしさを実感したことで、結婚を願う人のサポートを行う結婚相談業務に興味が湧いた。
「とても静かな家庭でした。ただ、彼女はずっと『子どもが欲しい』と思っていたみたいなんです。彼女なりに、それとなく伝えていたようなのですが、僕は気づかなかった。結婚してから2年くらい経って、彼女もいい加減はっきり言わないと伝わらないと思ったようで、初めて『子どもが欲しい』と言われました。僕は『そんなに欲しかったの?』って驚きました。上から目線のように聞こえてしまうかもしれませんが、そこまで言うなら応えてもいいのかなと思って、結果的に子どもを持つことになりました」
「何も言わない妻」の終わり
子どもが生まれた後も、関川さんにとっては居心地の良い関係のまま、結婚生活は続いた。しかし10年ほど経った頃、彼女が突然、感情を激しく表に出すようになった。
「もう我慢できない、と言われて、僕はびっくりしました。何をそんなに? って。でも彼女にとっては、結婚してから10年間、ずっと自分が言いたいことを我慢してきた生活だったそうです。僕は『何も言わない彼女』との関係が楽だったけれど、彼女にとっては、沈黙の積み重ねが大きなストレスになっていた。