一番大きかったのは、子どもが生まれたことで、彼女の中に『守るべき存在」ができたことだと思います。それまでは僕と一対一の生活だったので、『自分が折れないと』と思って、僕の性格に合わせて我慢していたけれど、子どもが生まれてからは、子どもを守るために『自分が変わらなきゃ』と思ったんでしょうね。僕に対しても『こいつを倒さないと』と思うようになったのかもしれません。
ずっと気持ちを溜め込んできた彼女が、勇気を出して僕に言いたいことを言うようになって、そこから夫婦関係のバランスが一気に崩れました。
それまでは2人で一緒に居られるだけでいい、という感じだったのですが、あれこれ求められ出すと、僕も『ああ、なんか面倒くさいな』という気持ちになっていきました」
男性の中には、女性に対して多くを望まない一方で、女性からあれこれ要求されたり、小言を言われることを嫌う人が一定数いる。そうした男性たちは、女性に対して「自分に対してあれこれ言わないでほしい」「そこにいてくれるだけでいいんだよ」という態度を取るが、女性から見れば、「それでは、一緒に暮らしている意味が分からない」となってしまう。
こうした「放置してほしい男性と、コミュニケーションを取りたい女性のすれ違い」「無自覚な男性と、察してほしい女性のすれ違い」は、あちこちの家庭で起こっている問題だろう。
「10年我慢してくれたことに、今は感謝している」
「今考えれば、結婚した後、僕は何も変わらなくてよかったから楽ちんだったけれども、彼女にとっては、子どもが欲しいということを2年間も言えなかった。本当に我慢の生活だったと思います。
でも『初めからそう言ってくれれば良いのに』とは思わなくて。初めからそう言われていたら、そもそも僕は彼女と結婚していないから。その点は彼女もわかっていたので、言わなかったのだろうと思います」
離婚の際は、揉めるようなことはなく、穏やかに関係を解消することができた。
「僕に対して、何も言わず、何も求めず、静かに暮らしてきた。それが彼女なりの愛情の形だったと思います。今も普通に連絡を取っています。憎しみも恨みもありません。
夫婦の関係性が悪くなっている状態で、無理に結婚生活を続けたところで、子どもにとってプラスになることはありません。そのため、子どもにもちゃんと説明しました。『お父さんとお母さんは別々の場所に住むことになりました。もう1軒おうちができるので、どちらのおうちにも好きな時に遊びに来てください』という感じで。
全然ジメッとしていない説明のされ方をしたので、本人もジメッとしようがなかったと思います。『じゃあ、今日帰ってきたら、お父さん家にいないから』みたいな感じで家を出て、別居をスタートしました」
