「日本」へのこだわり
日本を正確に描写することを追求したサフディは、エンドウ役にふさわしい日本人を探すだけでなく、クライマックスを日本で撮影することを求めた。エキストラに本物の日本人を起用することにもこだわったという。
エンドウのモデルとなったのは、1952年の世界卓球選手権ボンベイ大会でスポンジラバーのラケットを使い、優勝に輝いた佐藤博治。サフディは、1956年の世界卓球選手権で世界チャンピオンの座に輝いた荻村伊智朗にも影響を受けた。
「第二次世界大戦のあと、日本を国際的な孤立から救ったのが卓球でした。日本人選手はアジアの卓球を先導する存在でもあった。荻村の本を読んでいると、彼はまるで哲学者のよう。今は中国が卓球で有名ですが、もともとアジアの卓球は日本から始まったのです」
劇中には1950年代のニュース映像を再現したシークエンスもあり、まさかハリウッド映画でここまでリアルなものが観られるとは……と驚かされる。
「リサーチ班は東京とロサンゼルス、ニューヨークの図書館を訪れ、使える映像を懸命に探してくれました。そして荻村伊智朗の映像を見たとき、ニュース映像をどう見せるべきかがわかったのです。撮り方やモノクロのルック、ナレーターの声質や話し方までを正確に扱おうと決めました」
取材前日のプレミア上映にて、サフディはニュース映画のシークエンスを日本の観客とともに鑑賞した。「日本の観客なら、字幕を読むのではなく声を聞くことができる。皆さんと一緒に観ることが楽しみで、『あのシーンは劇場で観たい』と頼んでいました」
本作のプロデューサーである遠藤麻衣子は日本人、衣装デザイナーのミヤコ・ベリッツィは日系人。サフディは「僕の家族にも日本人がいます」と話す。
「僕と日本の関係は“家族”。この映画を日本に持ってくることを何よりも楽しみにしていました。僕にとって、皆さんの反応を知ることにはとても大きな意味があるのです」
『マーティ・シュプリーム 世界をつかめ』
監督:ジョシュ・サフディ/出演:ティモシー・シャラメ、グウィネス・パルトロウ、オデッサ・アザイオン、ケビン・オレアリ―、タイラー・オコンマ/2025年/アメリカ/149分/配給:ハピネットファントム・スタジオ/© 2025 ITTF Rights LLC. All Rights Reserved./公開中

