存立危機事態とは、「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態」と定義されている。
これをもう少しわかりやすく言えば、「日本と密接な関係にある他国に対する軍事攻撃が発生した場合に、日本がその状況で何らの行動も取らず、武力を用いた対処を行わなければ、日本国民に対して日本が武力攻撃を受けた場合と同様の深刻かつ重大な被害が及ぶことが明らかな事態」ということになる。
存立危機事態が認められれば、日本は限定的な集団的自衛権(自国と密接な関係にある他国が攻撃を受けた際、自国が攻撃されていないにもかかわらず、その攻撃に共同で対処することが出来るという国際法上の権利)を行使することが可能となる。
存立危機事態がこのように定義されたのには、日本政府の憲法解釈が大きく関係している。日本政府は、武力行使を禁じた憲法第9条のもとにおいても、日本を防衛するための必要最小限度の実力は行使できるとしてきた。その理由は、他国からの武力攻撃によって「国民の平和的生存権や、生命、自由および幸福追求の権利が根底から覆される」ような事態に対処することを、流石に憲法は禁じていないと解釈したためだ。そのため、日本が直接攻撃された場合は当然として、それと同様の深刻な被害が他国に対する攻撃によっても生じる明白な危険がある場合には、限定的に集団的自衛権を行使できると整理したわけだ。
そして、平和安全法制が国会で審議されていた当時、日本政府は「あくまでも例示」としながらも、ホルムズ海峡に機雷が敷設された場合にはそれが存立危機事態に該当し得ると説明した。
これは、日本が輸入する原油の8割、天然ガスの3割を輸送するタンカーが、ホルムズ海峡を通過しており、もしこれが滞れば、国民生活に死活的な影響、すなわち国民の生死にかかわるような深刻、重大な影響が生じると判断したためである。