ベニチオの“託され力”
セメント 原作では日本が舞台になるところがあるんですよ。タケシ君っていう日本人も出てくるし、日本ネタが多い。映画では日本ネタの要素を、全部ベニチオ・デル・トロ演じる空手師範「センセイ」に集約させているんですよね。
王谷 すべてが間違ってるんだけど、センセイは真面目にやってる感じがたまらなかったです。
セメント ベニチオの託され力を感じました。ウェス・アンダーソンの新作『ザ・ザ・コルダのフェニキア計画』でも性格の悪い金持ちを演じてるんです。そこでも、ちょっと希望があるんじゃないかという感じでウェス・アンダーソンにも託されているし、PTAにも託されてる。
王谷 性別、セクシャリティを問わず、メロつかれがちな男の人の代表だと思ってます。西のベニチオ・デル・トロ、東のラウ・チンワンくらいに思っていて。頼りがいの権化みたいな。
セメント ディカプリオとの顔合わせもすごくタイミングがよかったですよね。丁々発止な感じで。
王谷 後半、センセイがハイウェイパトロールに捕まって、ひょうひょうと上着のすそをつまんで身体検査を受けようとしている場面も印象に残っています。踊るようなよく分からない動きをしていて、かっこいいし、すごくおいしい役。
あのアホな女子高校生役が...
セメント 『ブギーナイツ』ではお父さんとの和解がクライマックスにくる。でも『ブギーナイツ』が息子視点だったのに対し、今作ではお父さん側に視点が動いている。そこにPTAの立場というか、心境の変化を感じました。PTAはいまマーヤ・ルドルフというアフリカ系とユダヤ系のルーツを持つコメディアンとの間に4人子どもがいて、劇中の設定と少し似ているんですよね。そもそも原作『ヴァインランド』では、人種差別はメインテーマではない。黒人女性たちが作品の中心になるのは映画独自の設定です。
王谷 そうなんですね。あと言いたいのが、レジーナ・ホールが「フレンチ75」のメンバーである黒人の活動家を演じていますよね。私は彼女がメインキャストで出ている『最終絶叫計画』のファンなんです。あのアホな女子高生役をやっていたころから、ここまできたかと。長く映画を見ていると、こういうこともありますよね。
セメント 彼女も素晴らしかったですね。そんなにたくさんセリフがあるわけじゃないけど、顔や目の演技だけですごく豊かなことを語っていて、よかったです。
