あとから冤罪だとわかったケース

 このように列挙すればきりがないのだが、全てのリンチが司法の代行というわけではない。

◆2019年、オルーロ県で、アレハンドロ・アパリシオ・サンチェス(Alejandro Aparicio Sanchez)が盗難の容疑で逮捕された。そして、逮捕直後に地域住民によるリンチで死亡したのだが、実際には無実であることがわかった。このような冤罪(えんざい)リンチ事件も起きている。リンチの当事者たちは「我々のやり方」として正当な手段であると主張し続けている。 

 これらの事例は、ボリビアにおける法の支配の脆弱さと、地域社会の暴力的な正義感がいかに制御不能であるかを示している。政治背景と地域住民の自警行動が交錯する中で、多くの無実の人々が犠牲となっている。

 政府とてわかっているが、警官を増員し、法の遵守を強化する方針を打ち出すに留まっていて、実際に改善する兆しは見えていない。そんな負の連鎖が相まって、地元の住民たちは「警察は信用できない」「自分たちの手で正義を実行する」といった考えを持ち続けており、リンチの風習が根絶される目処(めど)は立っていない。

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 現代の法治国家においては異質であり衝撃的である。ここには自分が引き起こしかけたという自戒の念もこめておきたいところだ。それはともかく特殊な事情は、伝統と現実的な事情が合わさって生まれたのだ。その意味ではコカインの作付面積がこの国だけは拡大しているのもうなずける。証拠や統計ではない、あくまで取材者としての私の感覚ではあるが。

次の記事に続く 「昨日のタコスはうまかったか?」その言葉は麻薬カルテル流の“警告”だった…丸山ゴンザレスが“取材中止”を決断した「戦慄の理由」とは