ガスマスクを装着して工場の中へ
取材当日の天候は悪く、雨が降ったり止んだりしていた。こういう時に天気が悪いと空気が重苦しく感じられる。私たちはFGRのオフィスに集合し、簡単な説明を受けると都心部から約1時間車で移動した。
キッチンはジャングルの中にあり、場所の詳細はFGRによって伏せられていた。舗装道路から砂利道に入り、悪路を通ってとうもろこしの畑を抜けた。きっちり1時間近い時間を経て現場に到着すると、軍隊が待機していて、摘発直後であるため周囲には緊張感が漂っていた。
現場に入る前、私たちに渡されたのはガスマスクだった。ここには有毒ガスが充満しているという。装着は手間取ることもなく、フルフェイスタイプではなかったが呼吸に制限がかかることによる息苦しさはあった。かつてミチョアカン州で取材した際には、キッチン内部に足を踏み入れるどころか、存在をうっすら感じ取ることが精一杯だったが、今回は現場に足を踏み入れる。ついにその瞬間が訪れたのだ。いやでもテンションが上がる。
ここまでの道中でも感じていたが、この場所へ偶然辿り着くのは困難である。誰かの案内がなければ決して発見できない場所だ。
だからと言って、麻薬カルテルに案内してもらうようなやり方はリスクが高すぎる。いつ裏切られるかわからないし、それこそ取材中に拉致や誘拐される可能性だってある。何をされても抵抗もできないし、逃げ場などないようなところである。
常識では考えられない世界が広がっていた
そんなキッチンに足を踏み入れると、そこには常識では考えられない世界が広がっていた。FGRによって摘発されたばかりで、今では静寂が広がっているが、ほんの数日前まではここで大量のドラッグが製造され、流通していたと考えると、その異様さに圧倒された。
広場に並ぶ謎の機材。見慣れない装置が無造作に置かれていたが、すでに捜査が入っていたおかげで、すべての機材にナンバリングがされていた。数字を追っていくことで、麻薬製造の手順が浮かび上がってきた。驚いたことに、逮捕された作業員たちは薬学の専門家でも化学の知識を持つ者でもなかった。彼らはただ、マニュアル通りに作業をこなすだけで、麻薬が完成するのだ。そう、まるで料理をするかのように。
覚醒剤の精製工程を整理すると、まず、主要な原材料であるエフェドリンを手に入れることから始まる。この材料を犯罪組織が合法的に入手できないため、密輸や窃盗、または偽装された取引を通じて手に入れる。そのため、これらの原料を入手するために広範なネットワークが必要になる。現在は中国からの密輸に頼っているのだと捜査員は教えてくれた。
