不動産屋が囁く「うそ」
さて大手であれ、地場であれ、共通するのが不動産屋得意の囁きだ。
「お客さん、この物件はよいでっせ。二度と出ない案件です」
このセリフは多くの場合「うそ」だ。
不動産屋にとっては買ってくれる客が一番の客。そして相手が素人だとみると、巧みな言葉遣いで誘導する。特に売りにくい案件からセールスするのが業界内では常道だ。よい物件など二度も三度も出てくるから商売が成り立っているのである。
「もうすでにほかのお客さんが検討中です。今なら間に合いますので少なくとも夕方までにはご決断ください」
この場合もほとんど実際のライバルは不在だ。その証拠に数か月後の同じ不動産屋の店先を覗くと当該物件のチラシが堂々と、しかも値段を下げて貼られていたりする。
「今だけ特別」「こんな良い物件みたことない」「お客さんは筋が良いので優先」はほぼ毎日囁くセリフなのであまり鵜呑みにしないことだ。
NHKで話題になり、今年映画化もされるドラマ「正直不動産」(原作は大谷アキラ [漫画]、夏原武 [原案]、水野光博 [脚本])は、こうした不動産屋の手口を晒した漫画をドラマ化したもので大変話題になった。しかしプロの私からみると「え? そんなことあたりまえじゃん」と思える内容ばかりで笑えないものが、正直あった。
「二度と出ない物件ですよ」に騙されない
不動産業界は他業界に比べて恐るべきアナログ業界だ。物件を実際に見ることが大切だといわれ、現場で後ろから耳元で囁かれると、何となく良い気分になり、とどめは「早くしないとなくなります」とせかされ、つい決断をしてしまう。
一度だけ見て、不動産屋の囁きや急かし、脅しで購入を決断する必要もないし、よしんば他者に買われてしまったのならば、もともとその物件とは縁がなかったのだとあきらめることだ。
ただ、不動産の面白いところは、第六感が意外に正解なところだ。ひと目みてすごく気に入ってしまった物件は、実は「買い」だと私は常に思っている。家は一つ一つ立地も形も違う。マンションだって一戸一戸、階数も方角も異なる。インスピレーションで人と家が繋がっているのであれば、それ以上の細かな分析はある程度、後回しでもよい。買うのは自分。くれぐれも「二度と出ない物件ですよ」に騙されないことだ。