2024年4月に総務省が行った住宅・土地統計調査によると、日本中の家の7軒に1軒が空き家になっているという。背景には人口の減少や生活スタイルの変化がある。さらにこれから先、親から相続した実家を持て余す人が増え、空き家も増加していくと予想されている。

 では、実際に家を相続してしまったら、どのように対処すればいいのか。ここでは『新・空き家問題ーー2030年に向けての大変化』(祥伝社新書)より一部を抜粋して、その解決法を紹介する。(全2回の2回目/最初から読む)

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樹形図で考える戦略構築

 空き家をどうするのか。この悩ましい問題に対処するには、まずデシジョンツリー(樹形図)を使って考えてみるのがよいでしょう。

「空き家問題の解決」樹形図 

 まず、空き家または空き家になることが確実な家を「残す」のか、「残さない=解体、撤去する」のかが最初のデシジョン(決定)です。そのうえで次のように方向性を整理します。

〈家を残す〉

 (1)当面の間、空き家として管理する

 (2)家自体を有効利用する

 (3)賃貸または売却する

〈家を解体、撤去する〉

 (4)更地として利活用する

 (5)更地として売却、または貸地にする

 実は空き家問題を解決する手法はこの5つの道筋しかありません。親の意向や相続する相続人(子など)の事情もあるでしょうが、まずはこのデシジョンツリーに従って冷静に問題を整理していくことです。

 またどれか1つの手法が絶対ということではありません。それぞれの手法の実現可能性をよく考えたうえで、優先順位をつけシミュレーションしてみることです。自分たちにとって最善と思っても、不動産マーケットではなかなか叶わない選択かもしれません。ただトライしてみないとわからない、納得感がない、といったこともあります。あれもこれもとやりだすと沼に嵌りますが、このデシジョンツリーを常に手元に置きながら、優先順位に従って実行していくことをおすすめします。

 よくあまり深く考えずに、家は使わないからとりあえず解体、撤去しようと考える人がいますが、2つ注意点があります。1つが解体費、もう1つが税金です。

 家の解体費が大変なことになっています。建設費が高騰しているという報道を耳にした人は多いかもしれませんが、建物解体についても同様にその費用が急騰しています。原因は人手不足と解体作業の複雑化です。人手不足はどの業界にも共通ですが、解体現場では特に人工の確保が難しくなっています。加えて、以前であれば重機(建設・運搬作業用の大型機械)で家を取り壊して、廃材を運び、整地するだけの作業であったものが、最近は廃棄物の取り扱いが厳しくなり、分別作業が作業工程に影響をおよぼしています。