2024年4月に総務省が行った住宅・土地統計調査によると、日本中の家の7軒に1軒が空き家になっているという。背景には人口の減少や生活スタイルの変化がある。さらにこれから先、親から相続した実家を持て余す人が増え、空き家も増加していくと予想されている。

 不動産業界に精通する専門家・牧野知宏さんはそんな「実家相続問題」とどう向き合ったのか。ここでは『新・空き家問題ーー2030年に向けての大変化』(祥伝社新書)より一部を抜粋して紹介する。(全2回の1回目/続きを読む)

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親の財産を知ることから、空き家対策が始まる

 3世代同居の世帯が減り、親も子もそれぞれが別の世帯を持つようになると、普段の生活で親、実家を意識する機会が減ります。親が地方在住であれば、里帰りは盆と暮れぐらい。それとて最近は互いの義理の親の家には出向かず、それぞれの家に帰省するなどという家庭も多いようです。昔は確かに住んでいたはずの実家でも、毎日の生活から離れてしまうと遠い存在になりがちです。親とのコミュニケーションも孫などがいればまだしも、最近は子供がいない、あるいは持たない家庭も増え、親と疎遠になりがちだという人も多くいます。

 そんななかでも相続というイベントは人が生物である限り必ず起こります。何となく親はいつまでも元気でいてくれるもの、と考えたり、願ったりしがちですが、多くの家では、実際に相続が発生すると驚きうろたえるものです。

 私自身が良い例です。私の父親は93歳で亡くなりました。最期の2年近くは老健に入所していましたが、認知症になることもなく、元気にしていましたので、知らせを受けた時は、多少の覚悟はあったものの驚きあわてました。相続そのものに対してまったくの準備不足だったのです。

 まず父親がどの程度の預貯金、有価証券を保有しているのか、私も姉も兄も3人ともまったく知りませんでした。母親はまだ元気でしたが、財産管理は父親がやっていましたのですこし覚束ないものがありました。家中のタンスや机をひっくり返して預金通帳や有価証券の内容を探りました。父親は大正生まれの人にしてはめずらしくネットリテラシーがあって、証券口座はすべてネット取引。パソコンを開いてもさてパスワードがわかりません。

 不動産については私が実業で不動産を扱っているのでおおむね所有不動産の概略をつかんでいましたが、姉や兄はその評価の仕方に疎く、いったいどの程度の財産評価になるかについて理解がおよんでいませんでした。不動産は実家のほか、都内の賃貸マンションと別荘程度でしたが、財産の全体像を把握するのに相当の時間を要しました。