郊外にある実家をどうするのか議論に
姉は早くに家を出ていました。また私も兄も大学卒業後はそれぞれ家を離れましたので、父親がどの程度の財産を所有しているかなど、まったく知りえませんでしたし、関心もありませんでした。
相続は発生するともう対策の打ちようがありません。淡々と相続財産の評価額を計算して税務署に申告するだけです。もはや俎板の上の鯉です。また遺言書には財産はすべて母親に、と記されていましたので、私たちきょうだいに異存はなく、遺産は母親に相続されました。なお、夫婦+子供の相続の場合、父親(母親)が亡くなり、母親(父親)と子供に相続されるのが一次相続。次に母親(父親)が亡くなって、子供に相続されるのが二次相続です。
ただ、その時横浜市の郊外にある実家をどうするのかはすこし議論になりました。横浜と言っても、実家があるのは市南部のニュータウン。ニュータウンと言っても昭和50年頃の開発地で、住民の高齢化が激しく、地元の中学校も廃校になっているようなオールドタウンです。母親がいるうちはまだしも、母親が亡くなったあと、さてどうするか。
私が調べた限りでも、もうあまり住宅が流通していないエリア。満足な価格で売れる可能性は低いです。また別荘も父親の趣味で買ったような家。場所も外房地区で交通は不便。兄は茅ケ崎、私は藤沢、姉は鹿嶋在住。きょうだいの誰も使う意思はありません。都内にあった賃貸マンションはともかく、横浜郊外の実家と外房の別荘はとうてい未来図を描くことができませんでした。それでも相続手続きが終了すると何となく「はい、おつかれさま」で、そのうちこの話はうやむやになってしまいました。
父親が亡くなった一次相続で感じたことは事前に親の財産を知っておかなければ、空き家対策を含め、相続対策はできないということでした。ただ、なかなか子供の立場から親に「親父、いくら財産持ってんの?」とは聞きづらいものです。特にわが家では父親はかなり厳格な性格の亭主関白でしたので、聞き出すことはほぼ不可能でしたし、母親は「うちはお父さんがアメリカに長くいたので年金が少なくて困っているのよ」とこぼすくらいで、聞いたところで容易に財産内容を把握できなかったと思います。こうした家庭環境が空き家対策を遅らせることにつながります。将来の実家の未来図は親自らが子に示す必要性があるのです。



