現状では、通常の家屋(延床面積100m²から120m²程度)で150万円程度はかかってきます。さらに庭石、灯籠、植栽などの状況によってさらに加算されますし、接道状況によっては重機が入らず、割高になります。解体費用の負担を誰が行なうかも含め事前によく検討しておく必要があるでしょう。

 もう1つ気をつけるべき問題が税金です。通常の住宅用地は先述したように住宅用地の特例として固定資産税、都市計画税が減免されています。ところが家を解体、撤去してしまうと、住宅用地ではなくなり、税務上は更地として評価されますので、特例が適用されなくなります。空き家が増える大きな原因の1つとしてこの特例の存在がクローズアップされています。固定資産税などの評価基準は毎年1月1日での状況ですので、更地化するまでの固定資産税は今まで通りでも翌年から特例の適用が受けられず、納付申告書が来てびっくりするなどということになります。

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 首都圏の郊外でも戸建て住宅は固定資産税が年間で10万円から15万円程度はかかっているはずです。この特例が外れると、税金は40万円から60万円程度に大幅アップしてしまいます。更地化後の活用方法が策定できていれば問題はありませんが、何も考えずにとりあえず更地化してしまうと、思わぬ事態に発展しますので注意する必要があります。

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 ではデシジョンツリーに従って具体的な対応策を考えていきましょう。

家を残す場合の対応策

 家を残す場合には、まず家のデューディリジェンス(適正評価手続き)を行なうことをおすすめします。具体的には、ホームインスペクション(住宅診断)です。親は現在の家に慣れ親しんで不自由なく暮らしているかもしれませんが、親亡きあとに、この家が十分に活用できるか、あるいは売り物として評価できるのかを冷静な目で判断しておく必要があります。

 戸建て住宅の場合、外壁は12年から15年に一度の塗装、屋根は20年から30年に一度の葺き替えが、家を劣化させない方法です。また住戸内の住設(住宅設備)機器はとりわけ水回りをよくチェックします。毎日利用する風呂、トイレ、洗面台、台所は家を評価する際には最重要ポイントです。経年劣化の激しいものについてはできるだけ更新しておくことが望まれます。エアコンも古い機器だと省エネの観点からも評価できません。給湯器もだいたい10年から15年で寿命を迎えます。こうした住設機器が整っているだけで、利用価値はかなり上がります。