個人戦までポジティブに過ごす秘訣とは?

引退を考え、トライアウトに手伝いで来ていた木原を三浦と初めて滑らせたのもマルコットコーチだった。Asami Enomoto/JMPA

 1月29日に現地入りし、まずは団体戦で全力を発揮する。2人はショート、フリーともに自己ベストを更新し、1位をマーク。そこから中6日で迎える個人戦に向けては、4年間の“学び”を生かした。

「個人戦までの期間をポジティブに過ごす。そのための気分転換はゲームです。ふざけている訳ではなくて。どうしてもアスリートは常に『良くしよう』と考え過ぎてしまいます。昨年は空き時間にノートを多めに書いたりしていたのですが、やっぱり自分たちには合っていなかったんです」(木原)

 今回も、2人がリラックスして過ごせるゲームを厳選。練習の日にゆっくり過ごすために「桃太郎電鉄」を、試合直前に盛り上がるために「マリオカート」をと、万端に準備した。

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「2021年の世界選手権の時に、試合前に2人でゲームをやったら本番へのメンタルがうまく持っていけて。それ以来、本番の何時間前にはゲームね、と決めています」(三浦)

「でも僕が勝つと璃来ちゃんが怒るので、わざと接戦で負けてあげます(笑)」。

「自分たちのメンタルの強さを出そうと思いました」

3つ目の要素であるリフトで失敗。木原は頭で三浦を受け止めた。Sunao Noto/©JMPA

 完璧な準備で迎えたショート本番。冒頭の3回転ツイストリフト、3回転トウループと、リスクの高い技を次々と決めていく。3つ目の要素のリフトは、2人が最も得意とし、加点をもらえる得点源だった。左手同士をつなぎ、片手で支え合った状態で回転しながら進んでいく。ところが体制を変えようとした瞬間、三浦の上半身が手のひらから逃げるように落ちた。

 木原はとっさに頭で三浦を受け止めると、三浦が怪我をしないように優しく降ろした。三浦はすぐに気持ちを切り替える。

「もう失敗できないと思いました。でもそういう場面って今まで何度もあったので、ここで崩れることはありませんでした。自分たちのメンタルの強さを出そうと思いました」

 直後のスロー3回転ルッツを成功させ、滑りぬく。フィニッシュポーズのまま、木原はうつむいた。マルコットコーチが「It’s not over」と言って出迎えても、首を横に振るだけだった。

 得点は73.11点。首位のドイツ組と6.9点差の5位発進となった。

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 落ち込み涙が止まらない木原に三浦がかけた一言、フリー本番で見せたパーフェクトな演技の裏側まで……ミラノ・コルティナ五輪の感動を再び味わえる記事全文は『週刊文春WOMAN 2026春号』で読むことができます。

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