『億までの人 億からの人』(田中渓 著)

 上には上がいる。たとえ億単位の資産を手にしようとも、人間、まだまだそんなところで満足していてはいけない。もっと上を目指さなければ……そんなアッパーな精神論や、そこに至るためのエキセントリックな投資術について書かれた本ではないか――。タイトルからはついそんな想像をしてしまう。

「これははっきり書いていただいて構いませんが、インパクトを狙って提案したタイトルで、実は著者はまったく気に入っていないんですよ(笑)」(編集部の安田宣朗さん)

 では、実際の内容はどうなのか。

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 著者は上智大学理工学部の大学院を中退し、ゴールドマン・サックス証券に入社。翌年リーマンショックによってどん底を味わうも、そこから17年間在籍し、最終的に投資部門の日本共同統括まで務めあげ、2024年に退社。その間に社内外300人を超える20カ国以上の富裕層と交流してきた。本書にはそのやりとりから実地で学んだ富裕層の哲学、思考、習慣などのエッセンスを、著者の目線でまとめあげている。

 本の前半は、主に金融リテラシーについて説く。給与所得に対する、投資という行為をどう捉えるか。複利を意識することの重要性。富裕層になる人は「金融エリート系」か「ベンチャー経営者系」が多い……など、言葉を選ばずに言えば常識的な事柄が並んでいるのだが、その一つ一つに説得力があるのは本書ならではだろう。後半になるとややトーンが変わる。早朝から活動すること、「勝ち癖」をつけること、何が幸せかを考えることなど、投資を行う上でのベースとなる生活習慣や時間管理術といった、よりよき人生を送るための指南が書かれている。

「著者ご本人も、本の内容を裏切らないスマートな方。朝の3時台に起きて活動したり、社会人アスリートとしての実績もあったりと、ストイックな面が向上心の高い人に響いている印象です」(安田さん)

 読者の男女比は半々。女性読者が類書と比べて多い。ビジネスパーソンはもとより、若年層にもリーチしており、熱心な学生の読者がイベントにも顔を出すほど。出演した配信番組もバズるなど、ネット文化との相性もよく、電子書籍のみでも2万部以上を売り上げている点も特徴だ。

2024年11月発売。初版1万1000部。現在14刷10万3000部(電子含む)