「馬主はどうですか?」
その一言が、すべての始まりだった。トップジョッキーの何気ない提案をきっかけに、藤田晋は“馬主”という未知の世界へ足を踏み入れる。やがて数十億円規模の投資へと発展し、名馬「フォーエバーヤング」誕生へ――。
なぜ彼は大きな決断を下せたのか。藤田晋と堀江貴文が互いに思考を語った『心を鍛える』(KADOKAWA)より一部抜粋してお届けする。(全3回の3回目/最初から読む)
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ワインにのめり込んだ理由は…
ワイン熱に火がついたのは、2020年6月、ちょうどコロナ禍の最中でした。既存のアカウントとは別に、ワイン専用のInstagramアカウントを作り、備忘録的に投稿を始めたところ、 「ワインを飲む楽しさ」がより増幅したのです。
その「ワインスタグラム」では、ワインの蘊蓄にはさほど触れず、交遊録や経営話も織り交ぜつつ日記のように書いています。誰に向かって書いているのか、自分でもわからなくなってきたほどです(笑)。
しかし、「いい塩梅で自己開示をして、誰かとつながりたい」という欲求をうまく昇華してくれるのも、ワインの持つ底力なのかもしれません。
ステイホーム中、1日の終わりにおいしいワインを飲むことが楽しみの1つになりました。改めてワインセラーを覗くと「こんなものがあったのか」と気づくことも多く、手持ちのワインを整理するつもりで飲み始めたのがきっかけです。
ところが、セラーが空くと寂しくなり、気になるワインをネットでどんどん買ってしまいました。その結果、いつの間にか、自宅には10台以上のワインセラーが!
「良いワインは、ここぞというときに飲む」と考える人は多いと思います。でも、そうした機会なんて、実はめったにないものです。
それよりも、毎日を丁寧に一生懸命に生きて、「1日を全力で過ごしたご褒美」として、ワインを適度に嗜むほうがいい――。今では、そんな考えに至りました。
エラそうに聞こえたら申し訳ないのですが、これが私なりの「ワイン観」です。もちろん、ワインの魅力に自分で気づけたわけではありません。
そもそも私にワインのおいしさを教えてくれたのは、GMOインターネットグループの熊谷正寿社長です。起業後、“社長2年生”の頃に「ボルドー五大シャトー」のワインを飲ませてもらったのがきっかけです。その後、ワインをテーマにした漫画『神の雫』(講談社)にハマり、さらに知識を深めました。
30代のときに楽天の三木谷社長からワインを趣味にするように助言をいただきましたし、幻冬舎の見城徹社長が「ワインは働く男の血である」とよくおっしゃっていたのですが、本当にその通りだと改めて実感できました。
おいしいワインがあると、相手に心を許せたり、逆に信頼感を持ってもらえたり、人との距離感が確実に縮まります。
10年以上も前の話ですが、当時のヤフー社長だった故・井上雅博さんとの会食には、『神の雫』の原作者である樹林伸さんが「腰を抜かすほどおいしい」と絶賛した、85年の「ロマネ・コンティ」を持参しました。当時、サイバーエージェントとヤフーの関係は冷えたものでした。でも、井上さんも大のワイン好きで、とても喜んでくださり、その会食から結果的に提携話へとつながりました(もちろん、打算でワインを利用したつもりではないのですが)。
その後、井上さんが急逝されたこともあり、あのワインは忘れられない1本です。
コロナ以前は社員との会食にも力を入れていました。社員がやってくる数十分前に店に到着し、ワインを選んでおくこともあります。ワイン好きになってくれた社員も多くいます。すると、オンタイムでの私との距離も自ずと縮まります。
つまり、ワインが世代を超えた「共通言語」となってくれるのです(もちろん、飲めない社員に強要することは絶対にありません)。
一方、「馬主」としての活動は、最近始めたばかりの“新人”です。
