――結果的に『キング・オブ・キングス』はアメリカで大ヒットを記録し、韓国映画としては『パラサイト 半地下の家族』(2020、ポン・ジュノ)を上回る、韓国映画歴代興収第1位を記録しました。
チャン・ソンホ そうですね。その点はまずほっとしたのですが、それ以上に嬉しかったのは、アメリカの観客の方に高評価をいただいたことです。アメリカには観客の満足度を調査する「シネマスコア」がありますが、ここで『キング・オブ・キングス』は「A+」という最高のレーティングを記録しました。この調査は1978年から50年近くにわたって続いていますが、「A+」を記録した作品は128本のみで、私たちの作品がそのひとつに選ばれたことは、とても嬉しく思いました。
――興行的な目くばせも大きかったとのことですが、その反面、『キング・オブ・キングス』ではキリストの生涯が丹念に追われ、キリスト自身も、慈愛に満ちたとても魅力的な人物として描かれています。キリストへの大きなリスペクトが感じられますが、チャン監督自身は「イエス・キリスト」に対してもともとどのような興味がおありだったのでしょうか。
チャン・ソンホ 私自身は、幼少期から教会に通っているクリスチャンではあります。学問として学びはじめたのは大学に入ってからですが、キリストは私にとってはごく身近な存在ではありました。なお、韓国ではキリスト教は一般に根付いているので、私のような人は珍しくはありません。
それだけに、作品をつくるにあたっては、そのような「身近さ」を多くの人に感じてほしいという思いはありました。
親子とともに学ぶ「キリストの生涯」
――ディケンズとウォルターの親子は物語の狂言回しとして、その誕生から最後まで、キリストの生涯に随伴します。とくにウォルターの、キリストへの新たな示唆を得ることで上げる感嘆の声は印象的で、これは観客を少年に同化させて、キリストのことを一緒に学んでいくという狙いかなと思いました。
チャン・ソンホ 私の意図を正確にくみ取っていただけたと思います。先ほどの「身近さ」を感じてほしいという話ともつながりますが、本作は、クリスチャンの方に楽しんでいただくだけではなく、そもそもキリストを知らない人にも届くように意識していました。そのために、ウォルターの役割は重要でした。
また、彼は物語を通して、キリストを自身の血肉とし、まわりの子どもたちにもその物語を伝えたいと考えるようになります。それが信仰にまで至る必要はありませんが、観客にもウォルターと同様に、キリストの生涯から何かを受け取ってほしいと思っていました。

