「神を描くこと」への思い
――『キング・オブ・キングス』では、水の上を歩く、盲人の視力を回復させるといったさまざまな奇跡や、ユダの裏切りをはじめとしたキリストの生涯で重要とされるさまざまなできごとが描かれます。逆に映画の中であえて触れなかった重要なポイントはありますか。個人的には、キリストの母マリアが夫であるヨセフと肉体関係がないままキリストを宿した、いわゆる「マリアの処女懐胎」が描かれなかったことが気になりました。
チャン・ソンホ 聖書においては、キリストに関する描写は多くが比喩的で、観念的なものです。かつ、そうした描写を深く味わうためには、キリスト教に通暁した立場での、高度な解釈が求められます。ただ、先ほども申し上げたように、私はキリストを知らない、聖書を読んだことのない人にも楽しんでもらいたかったので、キリストのエピソードの中でも有名な、かつ受け取りやすいものを中心に選びました。
マリアの処女懐胎もそうですが、『キング・オブ・キングス』の中で触れなかったもっとも大きなものは、「三位一体」の教理でしょうか。キリスト教において中心となる教理ですが、それだけに、映画の中で踏み込んで描くのはとても困難なので、映画においては外す選択をしました。
そうした意味では、『キング・オブ・キングス』はイエスの誕生から復活までを見せてはいるものの、信仰的には完璧な作品とは言えないでしょう。しかし、私は代わりに、「キリストが私たちの代わりに犠牲になったこと」「キリストが人間を愛し続けていたこと」「キリストそのものが愛であり、神であること」を伝えることに尽力しましたし、それは成功したと言えるのではないかと思っています。

