――イエス・キリストは「絶対的な存在」というイメージが強いですが、そのような存在を映画で描くことについては、リスクも少なくはないと思います。キリスト教映画の歴史を振り返れば、たとえば『最後の誘惑』(1989、マーティン・スコセッシ)は、キリストを悩める人間として描き、またユダの裏切りに新たな解釈を加えたことで、キリスト教の関連団体からさまざまな抗議の声があがりました。韓国では、キリストや彼のような巨大な存在を描くことについて、タブー視や抵抗のようなものはありますか。

©2025 MOFAC Animation Studios LLC.

チャン・ソンホ 韓国の「キリスト教社会」も、保守的な面はあります。そのため、『キング・オブ・キングス』に対して批判的な言及をしたクリスチャンの方もいました。ただ、多くの方は友好的で、本作についても好意的な評価をしてくれました。

 韓国では、映画を作る際に題材そのものに対して干渉されることはあまりなく、また、「この題材はやめよう」など、作り手が自己検閲に走るようなこともまず聞きません。そうした意味ではとても自由な空気が担保されており、韓国のコンテンツが近年世界で注目されているのは、ひとつはこの点に理由があるのではないかと思います。

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世俗的な欲望から生まれた「キリストの恩恵」

――『キング・オブ・キングス』を作られたのち、チャン監督のキリスト像はどのように変わられましたか。

チャン・ソンホ 最初に申し上げたように、「イエス・キリスト」の映画を作ることには、ビジネスとしての戦略がまずありました。しかし、映画として描く上では、「イエス・キリスト」について改めて深く考える必要がありましたし、映画を通してキリストと向き合う中で、私自身の信仰もさらに深まったように感じます。

 奇妙な言い方にはなりますが、映画の出発点において、自分が世俗的な欲望に動かされていたとすれば、この映画が完成することで、むしろ私の中では、その世俗的な欲望との距離が生まれたように思います。そのおかげで、私の心はずいぶん軽くなったように思いますし、これは間違いなく、キリストが与えてくれた恩恵であると思います。

『キング・オブ・キングス』 ©2025 MOFAC Animation Studios LLC.

『キング・オブ・キングス』
製作・監督・編集:チャン・ソンホ/声の出演:ケネス・ブラナー、ユマ・サーマン、ローマン・グリフィン・デイヴィス、オスカー・アイザック、ピアース・ブロスナン、フォレスト・ウィテカー、ベン・キングスレー/2025年/韓国・アメリカ/104分/配給:ハーク/©2025 MOFAC Animation Studios LLC./公開中

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