――ディケンズとウォルターの親子は完全な“黒子”ではなく、キリストに食事を与えたりもします。いわば過去への干渉が生まれているようにも見えるのですが、これはどういう意図があったのでしょうか。

チャン・ソンホ キリストは、私たちを超越した存在です。そのような存在であれば、人間の考える「時間」とは、異なった「時間」を生きているはずだと考えました。教科書などでは「歴史上の人物」として扱われているかもしれませんが、いまもキリストは私たちのそばにいると思います。また、『キング・オブ・キングス』においては、登場するキリストは、あくまでもディケンズとウォルターの対話の中の存在ですが、その中にもキリストの“現在性”というものはあると考えました。

 作品をよく見ていただければわかるのですが、映画ではディケンズやウォルターは、キリスト以外の、その時代を生きた人たちとの意思の疎通はなしえていません。あくまでもキリストとのみ、結びつきが生まれています。

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©2025 MOFAC Animation Studios LLC.

――ディケンズを登場させたのは、キリスト教の「伝え手」への敬意もあると感じました。ディケンズは朗読を通して、キリスト教を多くの人たちに伝えましたし、本作を通して、キリスト教が現在の私たちにまで届くに至ったのは、さまざまな人たちの尽力が根底にあることを実感しました。

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チャン・ソンホ おっしゃるように、キリスト教が全世界に伝わっていった過程においては、多くの信者たちの献身的な努力、また犠牲がありました。近年の『沈黙 -サイレンス-』(2016、マーティン・スコセッシ)では、江戸時代の日本で弾圧がいかに厳しかったかを学びましたし、そうしたことへの思いは、頭から離れることはありません。私が『キング・オブ・キングス』を、命の危険にさらされることなく作ることができたのも、先人たちの功績によるものですし、彼らへの敬意は確かにあります。