念願のコメディ役と「安心できる人」の存在
デビュー以来ずっとコメディをやりたいと思っていたのも、NHKのバラエティ『LIFE~人生に捧げるコント~』でコントを演じるなどして徐々にかなっていく。やはりNHKのドラマ『阿佐ヶ谷姉妹の のほほんふたり暮らし』(2021年。脚本は現在放送中の朝ドラ『ばけばけ』を手がけるふじきみつ彦)では、お笑いコンビ・阿佐ヶ谷姉妹の渡辺江里子の役を演じ、そのなりきりぶりが話題を呼ぶ。姉妹の住む東京・阿佐ヶ谷でのロケ中には本人に間違えられたという。相方の木村美穂を演じた安藤玉恵とも、《ほかの共演者と芝居するときに玉ちゃんがいなくなると急に不安になる。そういう存在がいることは心強くて安心できます》と語るほど息がぴったり合った(「週刊女性PRIME」2021年11月8日配信)。
仕事と家庭を両立するなかでも、誰かの助けを得ることの大切さを痛感した。子育てを始めた頃は、母親として完璧にこなせない自分に落ち込んでばかりだったが、そんなある日、アフリカでは「ひとりの子供を育てるのに、村みんなの力がいる」と言われていることを知り、もっと周りに頼っていいんだと心が軽くなったという。
もちろん、助けてもらった人たちへの感謝は忘れない。《もう感謝しきれないほどの愛をいただいている。これを全ての方にお返しするのは難しいが、できれば恩返しがしたい。でもできないなら、「恩渡し」でいいんじゃないかと気が付いた。私が誰かのために何かできることがあるなら、それは「恩渡し」。そうやって誰かのためになれたらうれしい》と語る(『幼児教育じほう』2022年7月号)。
「怪物になっていくしかない」役者としての覚悟
そう思うのは、2021年に102歳で亡くなった祖母の存在が大きいという。人の悪口を言わず、「おかげさまで」が口癖だった祖母はよく笑う人で、92歳でホエールウォッチングに出かけるほど好奇心もずっと旺盛だったとか。木村はそんな祖母のようにいろんな体験がしたいと、アルゼンチンタンゴのレッスンに通ったり、海外の作品への出演も念頭に英語を勉強したりと、仕事の現場以外でも挑戦を続けている。
《役者って何が大切かっていうと、どういう生き方をしているかに尽きる。それがお芝居に出る、恐ろしい仕事なんですよね》とは、いまから14年前の対談での木村の発言だ(『サンデー毎日』2012年6月3日号)。いろんな体験をするよう心がけているのも、そんなふうに俳優という職業を捉えているがゆえなのだろう。
なお、彼女はこの発言に続けて、役者には歳をとっても美しいままの人もいれば、天才的に演技力の高い人もいるが、自分はどちらのタイプでもなく、一生懸命やるしか能がないので、《すべて捨て去った一人の人間として評価されたいというか。自分で納得したいっていうのがすごくあるので。そうすると、怪物になっていくしかないんじゃないかと思って(笑)》と話していた。
役になりきるための尋常ではない打ち込み方を思えば、木村はブレイクしたころから怪物だったという気もする。それにしても「すべて捨て去った一人の人間として評価されたい」とはとてつもない野望だ。しかし、その後も自分をさらけ出すことを恐れず、内面を磨いてますます魅力を増していく姿を見るにつけ、彼女ならこの野望をかなえるのもけっして不可能ではないと思わせる。
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