俳優の木村多江がこの3月16日に55歳の誕生日を迎えた。いまではそのイメージもかなり薄らいだが、かつて木村はドラマや映画で不幸な女性の役を頻繁に演じ、「薄幸女優」などと呼ばれていた。(全2回の1回目/つづきを読む

木村多江(2012年撮影) ©文藝春秋

「薄幸女優」と呼ばれた過去とコメディへの憧れ

 本人は子供の頃から弟とコントを親戚の前で披露していて、俳優になってからも《ずっとコメディーやりたい、やりたいと言い続けてたんだけどね。「いや、多江ちゃんはこっちでしょう」と言われて、どんどん幸薄いほうに(笑)》進まざるをえなかったらしい(『AERA』2023年1月2・9日号)。

 20代の頃は、ドラマでは1話だけのゲスト出演、それも泣く芝居を求められることが多かった。まだ駆け出しだった彼女は、この現場で勝たないと次の仕事はないという恐怖心が常にあり、とにかくいい結果を出そうと必死だったという。そのため、《いきなり行って、うまく泣けるか泣けないかが、勝敗になる感覚がすごくあった。観ている人が一番ぐっとくるタイミングで涙を流すために、家で100回以上練習してから行ってた》といい、《涙が流れたタイミングが少しでもずれてしまったら、悔しくて悔しくて悲しくて、オンエアが終わってからも1カ月くらいその稽古していた》と後年明かしている(『AERA』前掲号)。

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2004年、ドラマ『君が想い出になる前に』(フジテレビ系)制作発表会見での木村多江 ©時事通信社

『白い巨塔』で見せた魂の演技

「観ている人が一番ぐっとくるタイミングで涙を流す」演技は、たとえば、30代に入ってから出演したドラマ『白い巨塔』(フジテレビ系、2003~04年)で効果を発揮した。このとき木村が演じたのは製薬会社の敏腕営業ウーマンで、気の強いキャラクターだったが、やがて末期癌であることが判明する。そのことを担当医の里見(江口洋介)から宣告される場面では、うろたえるあまり激高したかと思えば泣き崩れ、声を振り絞るようにして不安感を訴えたのだった。この場面は、その後も再放送のたびにSNSで話題になっている。