樋口 後に僕が編集者としてみうらさんを担当させてもらったときは、「サブカル」と言われるのをすごく嫌がっていました。「俺は福山雅治とかと対談したいのに、サブカルの枠に入れられる!」と愚痴っていましたから。
椎名 僕の中では久住昌之さんもサブカルのイメージだけど、今はそうじゃないだろうしねぇ。
樋口 『孤独のグルメ』があれだけ人気のテレビドラマになってますからね。
椎名 『中学生日記』(久住昌之+久住卓也による兄弟ユニット「Q.B.B」)とかはみんな読んでないのか……。僕の中では一番売れたサブカルの人が久住さんで、いちばん偉くなったのはしりあがり寿さんというイメージです。
樋口 これは吉田豪さんがおっしゃっていたと思うんですけど、サブカルと言っても星野源から根本敬さんまで幅が広いですからね。
椎名 ヘタウマから始まるサブカル価値観は、今の「コスパ」に取って代わられたのかな、ってのが僕の印象です。
コンプラとキャンセルカルチャーに萎縮する現代、90年代の“異常な熱気”が羨まれる理由
椎名 それにしても『凡夫』はすごい本ですよね。「会社でこんなことが起きる?」っていう衝撃的なことが次々と起きるから(笑)。
樋口 編集者の全員が狂人ですからね(笑)。本当にムチャクチャな時代でしたけど、僕はあの時代に「どうしても雑誌を作りたい」と思ってバイトからコアマガジンに潜り込んだ人間でしたし、あの時代の出版業界にいられて本当に良かったと思います。「生まれ変わってもコアマガジンに入りたいか?」と言われたら勘弁してほしいですけど(笑)。
でも『凡夫』を読んだ若い人の感想には、「自分が同じことをしたいとは思わないけど、こんなムチャクチャなことをできた時代が少し羨ましくもある」という声もあるんです。やっぱりコンプライアンスが重視され、キャンセルカルチャーですぐネットで叩かれる今の時代には、そういう空気に萎縮して、自分が面白いと思ったことをできない空気があるんだな、と。それは気の毒に思う部分もあります。
もちろん犯罪とかいじめ的なものは一切肯定しないですけど、僕も椎名さんも若い頃って「本当に俺、どうかしてたな……」って思うような恥ずかしいことを沢山やってきたじゃないですか。「若い男はバカをやって当たり前」みたいな空気がなくなったのは気の毒に思います。
椎名 この『オールナイトロング-私にとっての電気グルーヴのオールナイトニッポンとその時代-』(双葉社、以下『オールナイトロング』)をデザインしてくれた30代の男の子も「90年代のこの感じが羨ましい」と言っていました。僕より10個下ぐらいの女の子も、マッドチェスターとかのムーブメントをリアルタイムで体験できたのが羨ましいみたいで。こういうパーティーばかりで楽しかった時代はまた訪れるんですかね?

