「アルバム2~3枚でファンを名乗った」あの頃。サブスクが解体した、音楽との“重たい”付き合い方
樋口 個人的なことで言うと、僕も「これは一生聞くだろうな」と思っていた90年代の音楽をほとんど聞かなくなりました。もう血と骨になるどころじゃなく、排泄物になった感じのものも多くて、今は今の時代の新しいものを聞いています。藤井風なんか本当に天才だと思うし、自分の年齢が今の半分だったら神として崇めてると思います。
椎名 Spotifyとか最高だもんねぇ。あまりの量の多さで、そのアーティストが誰だか背景も分からないまま聞いちゃうこともあるんだけど、それがまた面白くて。
樋口 「サブスクではミュージシャンにお金があまり入らない」という話も聞きますけど、音楽を聞く時間は増えましたね。
椎名 僕らの時代なんて、「俺はあのミュージシャンのファンだ」とか偉そうに言っても、お金がないからアルバムも2枚3枚しか持ってないのが普通だったからね。
樋口 それと『オールナイトロング』で出てきた話のように、昔はiTunesでプレイリストを頑張って作っていましたよね。この本のなかに出てくる「もうこの世にiTunesはないんだぞ」って名言ですよ!
メンヘラでも鬼畜系でもない。電気グルーヴが貫く「現実主義者」としての成熟した横顔
樋口 あと最後に一つ。家から引っ張り出してきた2000年の『Quick Japan』の『電気グルーヴのオールナイトニッポン』特集号で、番組ディレクターの加藤(晋)さんか天久聖一さんが話していたと思うんですけど、「電気のいいところは神経症を売りにするような感じじゃないこと」という凄くいい言葉があったんです。これは本当に膝を打ちました! 今も昔もそうだけど、病気っぽい感じを売りにするアーティストっているじゃないですか。
椎名 いわゆるメンヘラ的なこと?
樋口 男も含める前提で、そういう感じですかね。それこそ鬼畜系の猟奇的なカルチャーとかは「病気っぽい」ですよね。
椎名 その「電気の2人が病気っぽさを売りにしていない」というのは、言い換えると「中二病じゃない」ってことだと思うなぁ。2人とも中二病的なものは「アホくさい」と思っているだろうし、もちろん子供みたいな側面もあるけど、現実主義者っぽい側面もある。大人として成熟している部分もきちんとある、というのは電気の2人の特徴かもしれないね。
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