今も伝説として語り継がれる深夜ラジオ『電気グルーヴのオールナイトニッポン』(1991年~1994年)。その熱狂の只中にいた放送作家・椎名基樹さんと、ヘビーリスナーとして人生を揺さぶられた作家・樋口毅宏さんが対面し、“あの時代”を語り合う。

 番組の貴重な裏話から、学生時代から電気グルーヴを知る椎名さんが語る2人の本質、そして音楽・雑誌・ラジオが交差した90年代サブカルの空気まで──。深夜ラジオが生んだ伝説の実像に迫る。(全3回の1回目)

椎名基樹さん ©橋本篤/文藝春秋

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瀧の姉に背中をさすられ涙……上京前の石野卓球の意外な素顔

樋口 『電気グルーヴのオールナイトニッポン』のヘビーリスナーだった僕が、まさかその作家の椎名さんとお会いできる日が来るなんて……。本当に嬉しいです! そして『オールナイトロング-私にとっての電気グルーヴのオールナイトニッポンとその時代‐』(双葉社、以下『オールナイトロング』)、とても面白かったんですが、電気のお2人から感想は何かありましたか?

椎名 卓球さんが電話をくれましたね。「よかったぞ。でも絶対に宣伝はしない」と(笑)。

樋口 えー! でも、この本には卓球さんの最高のエピソードがあったじゃないですか! 静岡から上京する前、仲間たちと飲んでいるときに急に泣き出して、「みんなと離れるのが寂しいんだよね」と瀧姉(たきねえ・瀧さんのお姉さん)が背中をさすって慰めてくれた、あの話。本人としては照れくさいのかなぁ。

椎名 そこについては「書いちゃってごめんなさい!」って謝りましたよ。そしたら「バカお前! あそこはもっといっぱい書け!」って言われました。

樋口 「俺のいい人ぶりを伝えろ」と(笑)。椎名さんは卓球さん・瀧さんと中学・高校の頃からの付き合いなんですよね。先輩である瀧さん・卓球さんに、ご自身のどういうところが好かれたんだと思いますか?

樋口毅宏さん ©橋本篤/文藝春秋

椎名 高校の頃から『人生』(※1)のライブとかは一緒にやってましたけど、好かれてたとは思ってないですよ。

※1 電気グルーヴの前身といえるバンド

樋口 そもそも椎名さんは、あの『人生』のメンバーだったんですよね……!

椎名 僕は何もしてないですが(笑)。

樋口 『人生』は何もしてない人のほうが多いバンドですからね(笑)。

椎名 でも石野さんには当時から人を惹きつける磁力があって、石野さんの周りには変な人が集まっていました。その生き方が今まで続いているのは凄いです。瀧さんとは今も一緒に釣りをしたりと、男の趣味の遊びを続けてますけど、それは僕が気に入られてるとかじゃなく、ただ単純に「学生時代からの仲だから」というだけだと思います。