電気グルーヴを中心に90年代サブカル全盛期を描いた一冊『オールナイトロング』(双葉社)。その著者・椎名基樹さんと、同時代を生き、『凡夫 寺島知裕。』(清談社Publico)で狂騒の時代を別の角度から記録した作家・樋口毅宏さんが語り合う。

 あの時代は何が特別だったのか。個人の記憶を書き残すことの意味、そして“あの熱狂”はどのように生まれ、なぜ失われたのか――。書くことで「治療」と「供養」をしてきた2人の、90年代サブカルの記憶をめぐる対話が始まる。(全3回の2回目/最初から読む

椎名基樹さんと樋口毅宏さん ©橋本篤/文藝春秋

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『オールナイトロング』と『凡夫』。個人史に刻まれた、90年代サブカルの“記憶の洪水”

樋口 『オールナイトロング-私にとっての電気グルーヴのオールナイトニッポンとその時代-』(双葉社、以下『オールナイトロング』)は、面白いだけでなく非常に刹那的なところもあり、切ないやら辛いやらで、椎名さんの記憶の洪水に読者の僕も押し流されるような本でした。僕は1971年生まれで、椎名さんは3つ上(1968年生まれ)なんですけど、ほぼ同時代を生きているので、自分の「あの頃」の記憶が重なって、「なんとも言えないわびしい気持ちになったコトはあるかい?」状態に(苦笑)。

 僕の『凡夫』も、どうしようもないエロ本出版社(コアマガジン)で働いていた僕の個人史的な回想録なんですが、「あの時代の記録をどうしても取っておかねば」という気持ちで書いたんです。

©橋本篤/文藝春秋

椎名 『凡夫 寺島知裕。「BUBKA」を作った男』(清談社Publico)、読みましたよ。Twitter(X)でも「電気グルーヴのオールナイトニッポンを絡めた個人史を書き記しておかなければ……という著者の執念が自分と似ているような」と書かれていましたね。

樋口 そうでしたね。僕の『凡夫』は上司の寺島さんを中心に据えて書きましたが、『オールナイトロング』を読んだことで「『凡夫』を読んだ人の気持ちって、こういう感じだったんだな」と客観的になれたところがありました。

 そして『オールナイトロング』は構成もすごく良かったと思います。「石野さんの部屋」「私の部屋」「イトチューの部屋」「瀧さんの部屋」と来て、最後は「霊安室」なんですよね。この構成は書く前に決められてたんですか?

椎名 時系列では書かずに、「何となくのつながり」で話をまとめたほうが、バラエティチックになるかなぁとは思っていました。