華やかな放送の裏側にあった確執と嫉妬。椎名基樹が記録したかった裏方のリアル
椎名 辛かったことでいうと、電気のオールナイトニッポンで作家をしていた時代の、ニッポン放送関係の人たちを悪く書かなきゃいけないのは辛かったですね。放送業界特有の強固な縦社会とか、そこで働く人たちの排他的な振る舞いとか。みんな大好きな人だし、ぜんぜん告発とかじゃないんだけど、僕は「あの頃の放送作家ってこんな仕事だったんだよ」という記録を残したかったんですよね。
樋口 僕は高校・大学時代に電気以外の『オールナイトニッポン』もよく聞いていて、とにかく明るく楽しい世界だと思っていたので、その裏に陰湿ないがみ合いとかがあるのは意外でした。
椎名 芸能に関わる世界で、上へ駆け上がろうとする人たちの話ですからね。
樋口 そういえば高田文夫さんも『週刊ポスト』の連載のなかで、まだ裏方の放送作家時代に「あいつ今に見てろ!」みたいな感情を強く持っていた……という話を書かれていました。
たけし、みゆき、松山千春……ANNのパーソナリティは僕らの「深夜の先生」だった
椎名 樋口さんは、たけしのオールナイトニッポンも聞いていたんですね。当時は高校生ですか?
樋口 中学生のころから聞いてました。木曜1部ですね。
椎名 たけしさんの番組は長かったですからね。俺が中学のときは「あの番組を聞いていないヤツは駄目なヤツ」みたいなガキっぽい選別をしていました。
樋口 そのあたりは3歳差だと微妙にギャップがありますね。僕にとってのオールナイトニッポンは、月曜はみゆきさん(中島みゆき)。火曜日のとんねるずは、当時からいじめや差別ネタが多いのが嫌であまり聞いてなくて、西川のりおの『スーパーギャング』を聞いていました。水曜日はキョンキョンの後に大槻ケンヂが大抜擢されたのが印象に残ってます。椎名さんは、こういうオールナイトニッポンのレギュラー陣は覚えてますか?
椎名 中島みゆきは覚えてるけど、ほかはあまり覚えてないなぁ。中学生の頃は松山千春がやってたかな?
樋口 そうらしいですね。松山千春が「俺は辞めるからお前が代わりにやれ」とみゆきさんに話した、というエピソードも聞いたこともあります。
椎名 松山千春は常にタメ口で、気さくな兄貴感がありましたね。
樋口 長渕剛もやってたし、オールナイトニッポンにはそういう「兄貴枠」的なパーソナリティがいたんでしょうね。
椎名 ディレクターは「兄貴」とか「姉御」とか言わせたがるんですよ。僕が作家をやっていた『篠原美也子のオールナイトニッポン』もそういう感じでした。
樋口 聞いてましたよ! 当時は湾岸戦争とかの時期だったのか、「男は戦争したがるけど、女は日々の生活のほうが大事だから」みたいな話をしていて、ふむふむと思いながら聞いていましたね。
椎名 細かいこと覚えてるねぇ(笑)。
樋口 勉強ができないのに、そういうことだけは頭に入ってるんですよ(笑)。

