「90年代サブカルの墓標」を刻む――書くことは「治療」であり「供養」だった
椎名 本に出てきた僕の友人のイトチューの壮絶ぶりすごいでしょう? おしゃれでセンスのよい人で、大学卒業後はしばらく海外放浪してました。長い間、双極性障害に苦しんで、病院の2階の窓から飛び降りた。「いつまでも遊んでると、もとの世界に帰れなくなる人もいるんだぞ」ということも、この本では少し書きたいと思いました。「60歳を前にして俺も帰れるのかな?」って感じですけど(笑)。
樋口 本当に僭越ながら、僕の本のことも交えて話させてもらいますけど、椎名さんは『電気グルーヴのオールナイトニッポン』の時代のことをこの本で書かれていて、僕は『凡夫』で当時のコアマガジンのことを書きました。著者は椎名さんであり僕ですけど、どちらも著者が主役ではないんですよね。でも、「この人たちのことを、この時代のことを事細かに書いておかなければならない」と思って書いたんです。だから、やっぱり書くことは「治療」なんだと思います。
椎名 たしかに、僕も亡くなった友人に対しては「書いておかなきゃ」という感覚がありました。あまりにも可哀想で。
樋口 僕も読んでいて心が痛かったです。でも、こうやって書き留めておくことで、その人の記憶を一冊の本として永遠に閉じ込めておくことができる。僕の『凡夫』も寺島さんの供養のつもりで書きましたし、本当に今日こうやってお話ができたことも良かったなというふうに思います。
椎名 ありがとうございます。
樋口 この本の帯にある言葉の通りですね。「熱狂と狂騒、そして数十年後の焦燥と破滅。期せずして、本書は、90年代サブカルの墓標となった」。これ、うまいことを書かれたなと思いました。
椎名 編集担当の栗田さんの文章です。
樋口 栗田さん素晴らしいです! でも『電気グルーヴのオールナイトニッポン』は3年弱しか放送されてない番組でしたから、その伝説は知っていても、詳しいことを知らない人は同世代でも案外いると思うんですよね。今もネット上に残された音源は聞くことができても、特に若い人にはオンタイムの空気感は分からないし。この本は『電気グルーヴのオールナイトニッポン』や電気グルーヴの凄さを伝える後押しになっていると思います。
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