樋口 この本を読むと、椎名さんはそういう場にいっぱい行かれてますよね。
椎名 遊び場も多かったから楽しかったですね。それにしても、この頃の日本のサブカルチャーの花の咲き方って本当に異常だったよね。
樋口 百花繚乱でしたねぇ。
椎名 50年代のアメリカくらいの咲き方をしてるなって思うよ。
樋口 それ、同じようなことを2年くらい前にコーネリアスの小山田(圭吾)さんに聞いたんですけど、「まず一つは、世界中の中古レコードが東京に集まっていたのが理由」とお話しされていました。フレンチものからサントラまで色んなものが集まってたし、しかも当時はサンプリングがかなり自由だったんですよね。今では数秒使うにも許可が必要なのが、当時はそのあたりが緩くて、そこから聞き手は元ネタ探しに旅に出て、古い音楽を温故知新で楽しむことができたのに。
椎名 あと当時はゲームソフトとかも凄かったよね。
樋口 そして総合格闘技。『オールナイトロング』に書かれていたPRIDEも凄かったです。
「お金はなかったが、雑誌は買えた」――100円バーガーや中古レコードが支えた90年代サブカルチャー
樋口 あの時代のカルチャーって、結局は「悪ノリ」がすごく強いので、今で言うところの「有害な男らしさ」として断罪されると思います。僕の『凡夫』の話もそうだし、椎名さんの『オールナイトロング』にもそういう要素はあると思います。なので、この時代のサブカル的なものは「一旦はもう終わったのかな」と思います。
あと、今と昔の違いでいうと、今の若い人は昔以上にお金がないんですよね。僕らの若い頃もお金はなかったですけど、ないなりに楽しんで生きていたじゃないですか。電気のお2人もやっていた有名なエピソードみたいで、自動販売機の小銭のところに指を突っ込んでお金を探したり。
しかもお金がないと言っても、昔はセブンイレブンのおにぎりも100円だったし、吉野家の牛丼も270円だったりした。マックのハンバーガーも80円の時代もあったじゃないですか。
椎名 サンキューセット(390円のマクドナルドのセット)とかねぇ。
樋口 そうそう。だから書店に行けば好きな雑誌を買えたし、レコード屋でも中古で安くなってるレコードを買えたんです。物価高の今は買えないですよね。
でも今の若い子は、お金がなくても1日YouTubeやショート動画で楽しめるし、そこでまた新しいムーブメントはどんどん生まれてると思います。僕らの頃よりも規模が大きくなったアニメのカルチャーもありますし、僕らの時代とは違う形で、若者はタフに・したたかに生きているし、その世代にしかない好きなものがあると思います。

